2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12210010
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
祖父江 元 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (20148315)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
犬飼 晃 医学部附属病院, 助手 (30314016)
道勇 学 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (90293703)
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Keywords | ポリグルタミン / 球脊髄性筋萎縮症 / テストステロン / アンドロゲン受容体 / ホルモン治療 / Hsp |
Research Abstract |
球脊髄性筋萎縮症(SBMA)は成人発症の下位運動ニューロン疾患であり、進行性の四肢筋力低下と球麻痺を主症状とするポリグルタミン病のひとつである。原因はアンドロゲン受容体(AR)のポリグルタミン鎖の異常延長であり、男性のみに発症し、女性保因者通常無症状である。我々の作製したchicken β-actinプロモーターの調節下で異常延長したCAGリピートをもつヒトの全長のAR遺伝子を発現するトランスジェニックマウスでは、雄でより重篤な症状や病理所見がみられ、SBMAの臨床所見に一致する所見が得られた。さらに、去勢によるテストステロン分泌抑制が変異ARの核内集積を抑制することで雄マウスの症状を劇的に改善し、テストステロンの投与は逆に核への変異AR集積を促進し雌の症状を増悪させることを明らかにした。この結果から、SBMAでは男性ホルモンに依存した変異ARの核内移行が病態の中心的役割を果たしていることと考えられ、それを抑えることが本疾患の治療となりうると考えられる。現在我々は、ヒトに投与可能な薬剤としてLHRHアナログおよびARアンタゴニストによるホルモン治療の効果をモデルマウスで検討中である。一方、分子シャペロンによる変異タンパクの毒性軽減効果にも注目し、SBMAトランスジェニックマウスとHsp70高発現マウスとのダブルトランスジェニックマウスを作製した。運動機能はHsp70の高発現により著しく改善し、病理学的にもHsp70の核内封入体との共存が証明された。加えて、Hsp70の高発現は凝集していない変異ARのモノマーの量も減少させることを明らかにした。これは、Hsp70が変異ARに結合し構造を正常化することで、ユビキチン-プロテアゾーム系を介した変異ARの蛋白分解が促進されることを意味しており、Hsp70高発現によるSBMAの治療の可能性を示唆するものである。
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[Publications] Masahisa Katsuno: "Testosterone reduction prevents phenotypic expression in a transgenic mouse model of spinal and bulbar muscular atrophy."Neuron. 35. 843-854 (2002)
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[Publications] Hiroaki Adachi: "HSP70 chaperone over-expression ameliorates phenotypes of the SBMA transgenic mouse model by reducing nuclear-localized mutant AR protein"J Neurosci. (in press). (2003)
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[Publications] Masahisa Katsuno: "Transgenic mouse models of spinal and bulbar muscular atrophy"Cytogenet Genome Res. (in press). (2003)
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[Publications] Chen Sang: "c-Jun N-terminal kinase pathway mediates Lactacystin-induced cell death in a neuronal differentiated Neuro2a cell line"Mol Brain Res. (in press). (2003)
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[Publications] 勝野 雅央: "球脊髄性筋萎縮症の動物モデル"神経進歩. 46. 726-735 (2002)
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[Publications] 祖父江 元: "運動ニューロン疾患、内科学 第8版"朝倉書店. 6 (2003)
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[Publications] Gen Sobue: "Spinal and bulbar muscular atrophy (SBMA). In Neurodegeneration. The Molecular Pathology of Dementia and Movement Disorders, Dickson D and Olsson Y (eds)"INS Neuropath Press : USA (in press). (2003)