2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12210020
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
中村 俊 国立精神・神経センター, 神経研究所・診断研究部, 部長 (00134619)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市川 真澄 東京都医学研究機構, 神経科学総合研究所, 主任研究員 (20124414)
笹岡 俊邦 国立精神・神経センター, 神経研究所・疾病研究7部, 室長 (50222005)
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Keywords | 体性感覚野 / バレル / 臨界期 / 脳由来神経栄養因子 / BDNF / NMDA受容体 / AMPA受容体 / 視床 |
Research Abstract |
1.体性感覚野の機能発達におけるニューロトロフィンの役割を明らかにするために、脳切片をもちいて電気生理学的解析を行った。出生直後の1週間は臨界期と呼ばれ、末梢の入力に依存した中枢のシナプス可塑性が顕著である。解析の結果、視床から皮質第4層のニューロンに対する興奮性シナプスは、まずNMDA成分を主とするサイレント型から、神経活動依存性にAMPA成分を主とする活性型に変換されることが明らかにされた。脳切片においても、プレ側に刺激を加えると同時に、ポスト側の膜電位をNMDA受容体のマグネシウムブロックが解除される+40mVにシフトすると(ペアリング刺激)、サイレントシナプスを活性型に変換することが可能であった。ついで、脳由来神経栄養因子、BDNFのノックアウトマウスをもちいて発達過程を同様に調べたところ、サイレントシナプスの割合が高く、ペアリング刺激を加えても、活性型に変換することが出来なかった。興味深いことに、ペアリング刺激によりサイレントシナプスを活性型に変換する過程は、BDNFの受容体であるTrkBのチロシンキナーゼ活性を阻害するK-252aにより抑制され、その膜非透過型阻害剤であるK-252bをポスト側の細胞に記録電極から注入することによっても抑制された。さらに、BDNFのノックアウトマウスにおけるペアリング刺激による活性化の不成立は、BDNFを脳切片の還流液に添加(20ng/ml)することにより解消された。この結果は、サイレントシナプスの活性化にBDNFが必要であり、その作用はポストシナプスの受容体を介していることを示唆している。現在、BDNFがどのようなシグナル伝達過程を介して、AMPA受容体応答性を活性化しているのかについてさらに解析をすすめている。 2.体性感覚野は頬髭の受容野であり、頬髭のパターンが位相を変えずに大脳皮質第4層に投射している。この中枢におけるパターンは、臨界期以前に末梢からの入力を遮断すると形成されなくなることから、末梢の入力に依存していると考えられる。一方、皮質の領域性に関する最近の研究から、皮質の領域性は末梢の入力とは独立に決定されることが明らかにされてきた。このことから、体性感覚野におけるパターンは末梢の入力と中枢側での情報の相互作用により決定されていると推定されるが、その作用機構については何も知られていない。この点を明らかにするために、我々は、頬髭のパターンを臨界期以前に中枢側とは独立に変更し、中枢側にどのようなパターンが生成するかを解析した。具体的にはニワトリのShhをアデノウイルスベクターに組み込み、in uteroで胎児に感染させることにより、頬髭のパターンを変更することを試みた。この解析から、Shhの過剰発現により頬髭のパターンが変更されること、さらに変更されたパターンは中枢側に位相を変えずに反映されることが明らかとなった。この実験系により、パターン形成における末梢と中枢の相互作用を詳細に解析することが可能である。
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[Publications] Itami C., Samejima K, Nakamura S.: "Improved data processing for optical imaging of developing neuronal connectivity in the neonatal mouse barrel cortex"Brain Res.Protocols. 7. 103-114 (2001)
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[Publications] Nakamura Shun: "Regulation of synaptic plasticity by brain-derived neurotrophic factor"Recent Res.Neurochem.. 4. 117-135 (2001)
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[Publications] Iida N., Namikawa K, Kiyama H, Ueno H, Nakamura S, Hattori S.: "Requirement of Ras for the activation of mitogen-activated protein kinase by calcium influx, cAMP, and neurotrophin in hippocampal neurons"J.Neurosci.. 21. 6459-6468 (2001)
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[Publications] Inoue T, Nakamura S, Osumi N.: "Current topics in comparative developmental biology of vertebrate brains"Neurosci.Res.. 39. 371-376 (2001)
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[Publications] Inoue T, Tanaka T, Takeichi M, Chisaka O, Nakamura S, Osumi N.: "Role of cadherins in maintaining the compartment boundary between the cortex and striatum during development"Development. 128. 561-569 (2001)