2004 Fiscal Year Annual Research Report
アミロイドβ蛋白(Aβ)重合機構の解明:動物モデルにおけるseed Aβの捕捉
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12210022
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Research Institution | National Institute for Longevity Sciences |
Principal Investigator |
柳澤 勝彦 国立長寿医療センター, (研究所), 副所長 (10230260)
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Keywords | アルツハイマー病 / アミロイド蛋白 / ガングリオシド / アポリポ蛋白E / シナプス / マイクロドメイン / 遺伝的変異型 |
Research Abstract |
アルツハイマー病(AD)脳内におけるAβ重合はGM1ガングリオシド(GM1)に結合したAβ(GAβ)のseed作用を基礎とするとの仮説をもとに研究を進めた。今年度は脳内におけるGAβ形成の分子基盤をヒト型アポリポ蛋白E(apoE)遺伝子導入マウスを対象に検討した。年齢の異なるapoE3発現マウスならびにapoE4発現マウス脳よりシナプトゾーム(SP)を調整し、GM1を定量した結果、Triton不溶性マイクロドメイン画分中のGM1量が老化により増加すること、またこの老化依存性GM1量増加はapoE4発現マウスにおいてより顕著であることを確認した。このマイクロドメイン内のGM1量増加により可溶性Aβの重合が促進されるか否かを評価した結果、老齢apoE4マウス脳より調整したSPの存在下におけるAβ重合は弱齢マウス脳より調整したSP存在下における場合に比して有意に亢進していることが確認された。今年度はさらに、Abeta重合促進におけるガングリオシドの役割を明らかにすることを目的に、Aβ内にアミノ酸置換を伴う家族性AD(Arctic型変異)に着目し研究を進めた。Arctic型Aβは脳の実質に選択的に重合・沈着することが知られており、その分子基盤としてのGM1によるAβ重合促進の可能性を検討した。その結果、Arctic型Aβは野生型ならびに他の遺伝的変異型Aβとの比較において、GM1の存在下で有意に高度な重合を示すことが確認された。この結果は、Aβ重合を誘導する環境要因としてのガングリオシドの役割に新たな支持を与えるものといえる。以上、本研究は脳内におけるAβ重合の老化依存性ならびに領域依存性に対して初めて脂質化学的検討を加え、Aβ重合に与える環境要因の影響を解明する一つの視点を提供したと考えられる。
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