2000 Fiscal Year Annual Research Report
運動学習における大脳皮質ニューロンネットワーク内の動的情報変換機構
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12210025
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
蔵田 潔 弘前大学, 医学部, 教授 (30170070)
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Keywords | 大脳皮質 / 運動前野 / 頭頂連合野 / 運動学習 / プリズム適応 / ニューロン活動 / 神経回路 / マルチレコーディング |
Research Abstract |
ヒトやサルが行う上肢による到達運動は、シフトプリズムを装着することにより視覚空間座標と運動座標との間に解離が生じても、10-20回の試行で正確に目標に到達することができる。しかもこの運動学習にはプリズムの着脱毎に、極めて高い再現性のあることが確認されている。このような運動学習に大脳皮質運動前野腹側部が重要な役割を果たしていることが明らかにされている。本年度の研究では、この目標点への手到達運動のプリズム適応が運動前野腹側部内およびその周辺の神経ネットワークにおける信号伝達の変化によって達成されるという仮説を立て、運動前野腹側部と同領域への入力元である頭頂連合野、および出力先である一次運動野から単一ニューロン活動の多点同時記録を行うことで検証した。 これらの領域の運動関連ニューロンなどのいずれもプリズム適応中に特異的な発火を示すものはほとんどなかった。しかし、ニューロン間の相互相関を解析すると、プリズム適応中に特異的にスパイク後促通を示すニューロン対が存在した。これらは特に運動前野腹側部内の運動関連ニューロン間である場合が多数であった。一部は運動前野腹側部内の運動関連ニューロンとそれ以外のニューロン、および運動前野腹側部と後頭頂皮質の運動関連ニューロン間で認められた。しかし後頭頂皮質および一次運動野内では運動学習特異的なスパイク後促通を示すニューロンの個数は極めて少数であった。 このことは運動前野腹側部の神経ネットワークにおける特異的なシナプス伝達効率の変化がプリズム適応に関わっていることを示すものと考えられる。これまでの研究により、運動前野腹側部には視覚座標系を反映するニューロン群と運動座標系ニューロン群の存在することが知られているが、本研究の結果はこれらニューロン群間の結合性が変化することによってプリズム適応が達成されることを示唆する。
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[Publications] Kurata,K.: "Activation of the dorsal premotor cortex and the pre-supplementary motor area of humans during an auditory conditional motor task."J.Neurophysiol.. 84. 1667-1672 (2000)
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[Publications] Kurata,K.: "Dynamic changes of information transmission in the ventral premotor cortex of monkeys during prism adaptation."Neurosci.Res.. 24 Suppl.. S34 (2000)
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[Publications] 蔵田潔: "大脳皮質の高次運動制御機構"神経研究の進歩. 44. 922-928 (2000)
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[Publications] 蔵田潔: "脳科学大辞典「高次脳機能の研究手法」"朝倉書店. 1006 (2000)
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[Publications] 蔵田潔: "脳科学大辞典「運動プログラミング」"朝倉書店. 1006 (2000)