2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12210108
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
小椋 利彦 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教授 (60273851)
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Keywords | iroquois / 小脳 / 中脳 / 後脳 / オーガナイザー |
Research Abstract |
ショウジョウバエの神経分化の過程で、最も早期から働く遺伝子としてIroquois型のホメオドメインをDNA結合モチーフにもつ転写因子が同定されていた。最近になって、本研究を含めた脊椎動物の解析から、高等動物にも構造のよく似た遺伝子(Irx)が存在することがわかってきた。本研究ではニワトリをモデル動物としてIrx遺伝子の単離と解析を行った。この結果、複数のIrx遺伝子が単離され、染色体上にマップした結果、2つの染色体上の位置に複数のIrx遺伝子が列んでいることが明らかとなった。この構造は全体としては小さいものの、Hox遺伝子の構造によく似ていると言える。また、おのおののIrx遺伝子の発現を解析した結果、後脳ロンボメアにおいて分節特異的な発現を示すことがわかった。詳しい解析がら、種々のIrx遺伝子の発現部位とHox遺伝子の発現の組み合わせによって、複雑な後脳内の神経細胞の分化様式が規定されている可能性が見いだされた。これは、進化の過程でIrx遺伝子とHox遺伝子が類似した複雑化を遂げてきたことを強く示唆する。すなわち、後脳の多様な神経細胞の分化様式はHox codeとIrx codeの2つを想定することでよく説明できる。 また、Irx2遺伝子は、後脳の頭側にできるrhombic lipに強く発現することが見いだされた。この領域は、小脳の発生が起こる場所であることから、Irx2遺伝子が小脳の発生に関与することが考えられた。これを証明するため、電気穿孔法によってIrx2遺伝子を中脳領域に強制的に発現させた。しかし、中脳領域の劇的な変化は認められなかった。rhombic lipからの小脳発生は、後脳中脳境界部(Isthmus)に発現するFGF8の影響を受けることから、Irx2はFGF8と協調して働くことが予想された。そこで、Irx2とFGF8遺伝子を同時に強制発現させた。この結果、中脳がほぼ完全に小脳に構造転換した。このことは、Irx2が小脳形成の決定因子であり、FGF8と協調的に働いて小脳の形成に直接関与していることを意味している。以上の結果から、Irx遺伝子が神経発生に重要な働きをもつことが具体的に立証された。
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Research Products
(1 results)