2000 Fiscal Year Annual Research Report
ラットを用いた大腸発癌機構の検討と大腸発癌抑制機序解明への展開
Project/Area Number |
12213083
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
岸本 洋輔 鳥取大学, 医学部, 助教授 (10273905)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 純一 鳥取大学, 医学部, 教授 (60189529)
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Keywords | 大腸癌 / 非ステロイド性消炎鎮痛薬 / COX-2 / APC / ACF / ラット / アゾキシメタン / K-ras |
Research Abstract |
我々はラット大腸発癌モデルにおける各種遺伝子(APC、β-catenin、K-ras、COX-2、IGF2等)の構造や発現の異常(loss of imprinting(LOI)も含む)を癌発生の種々の段階で明らかにすること、及び、その上で、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAID)をこの発癌モデルに対して用いた時の遺伝子の変化を調べ、NSAIDの大腸発癌抑制機序を明らかにすることを目的とする。大腸特異的発癌物質azoxymeyhane(AOM)投与後のラット大腸での遺伝子変化は、投与後5週(発癌初期)でK-ras点突然変異がaberrant crypt foci(ACF;大腸前癌病変)の40%にみられ、normal appearing colonic mucosa(n-mu)ではCOX-2発現検出可能例の出現とともにAPC発現の低下傾向がみられた。発癌中〜後期ではβ-cateninの異常蓄積がadvanced ACF段階以降にみられ、さらに癌組織でCOX-2の高発現とAPC発現の低下もみとめられた。癌のK-ras点突然変異はACFのそれより低く20%であった。K-rasは発癌初期に重要な役割をしていると考えられる。さらにAOM投与と同時に非ステロイド性消炎鎮痛薬(スリンダク、エトドラク)の継続投与を開始したところ、5週の段階でACFの発生の抑制と同時にn-muにおけるAPC発現が5〜10倍に、また40週の段階でも2倍に増加しており、NSAIDsのAPC発現増加作用が大腸発癌抑制に関与する可能性が示唆された。なお、このラットモデルでのLOIと大腸発癌の関連については、現在のところ明らかな関連性を示唆する十分なデータは得られていない。この研究を通して大腸癌抑制のkey targetを定め、今後はAOMやNSAIDsの薬物代謝をも考慮し、実際の予防・治療につなげていきたい。
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