2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12215021
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
後藤 由季子 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教授 (70252525)
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Keywords | AKT / 生存 / ガン |
Research Abstract |
本研究は、プロトオンコジーンAktのターゲットを明らかにすることで、Aktの癌化誘導メカニズムの理解に迫ることを目的とした。Aktが癌化を誘導する機構として、細胞増殖と生存の促進が考えられている。本研究では、特にAktが細胞生存を促進する際のターゲットを検討し、新たにNur77およびカスペース9がAktの基質であることを明らかにした。 Aktはアポトーシスシグナル伝達の様々なステップをターゲットにして生存を促進する。近年、Aktがアポトーシス誘導に関与するForkhead等の転写因子をリン酸化することが報告されている。本研究では、負の選択において未成熟T細胞のアポトーシス誘導に関与することが知られている転写因子Nur77が、Aktのターゲットのひとつであることを明らかにした。Aktは、Nur77のSer350をリン酸化することによって、Nur77の転写活性およびアポトーシス誘導活性を抑制した。AktによるNur77のSer350リン酸化は、Nur77のDNA結合活性を抑制するとともに、Nur77の14-3-3結合を誘導し、転写活性の抑制を引き起こすことが示された。 カスペースは、アポトーシスの実行に関わるプロテアーゼのファミリーである。カスペースはカスケードを構成しており、カスペース9はカスペースカスケードの起点に位置する分子である。種々のアポトーシス刺激は、ミトコンドリアからcytochrome cの放出を促し、cytochrome cによるApaf-1/カスペース9複合体の活性化を誘導する。我々のグループは以前に、Aktがcytochrome cによるカスペースカスケードの活性化を抑制することを見いだしている。本研究においてAktがカスペース9の2つの部位を特異的にリン酸化し、カスペース9のApaf-1への結合能を抑制していることをはじめて示した。この結果は、Aktがミトコンドリアから下流のアポトーシスシグナルを抑制する分子機構を説明するものである。
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[Publications] Fujishiro,M.: "MKK6/3 and p38 MAPK Pathway Activation is not Necessary for Insulin-Induced Glucose Uptake, but Regulates Glucose Transporter Expression"J.Biol.Chem.. (in press). (2001)
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[Publications] Ura,S.: "MST1-JNK promotes apoptosis via caspase-dependent and -independent pathways"Genes to Cells. (in press). (2001)
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[Publications] 後藤由季子: "細胞死の分子メカニズム-多様性への理解-"Molecular Medicine. 37. 384-390 (2000)
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[Publications] 鶴田文憲: "生存シグナルとアポトーシスシグナルのクロストーク"実験医学. 18. 1384-1390 (2000)
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[Publications] 浦誠司: "PI3K-Akt経路のシグナル伝達"現代科学. 増刊37. 95-103 (2000)
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[Publications] 森靖典: "サバイバルシグナルとアポトーシス-生のシグナル:Aktを中心に-"Apoptosis Watch for Cancer Chemotherapy. 3. 14-15 (2000)