2003 Fiscal Year Annual Research Report
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12215157
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Research Institution | Osaka Bioscience Institute |
Principal Investigator |
佐邊 壽孝 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 分子生物学部門, 研究部長 (40187282)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永渕 昭良 熊本大学, 発生医学研究センター・初期発生分野, 教授 (80218023)
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Keywords | 細胞運動 / インテグリン / カドヘリン / 浸潤性 / Rho-family GTPases / パキシリン / βカテニン / プラコグロビン |
Research Abstract |
当該年度においては従来研究を進めていた細胞の接着や浸潤過程で作動するインテグリンシグナルに関する研究を進めた。上皮性がん細胞の浸潤や転移において、多くの場合、細胞は単独に移動するのではなく、集団的移動(collective migration)形態をとることが知られている。このような集団的移動は、発生期においても上皮由来組織の形成やremodelingの際に頻繁に見られるものである。集団的移動においては、細胞はインテグリンを活性化し、細胞-基質間接着をし、基質上での運動能を獲得しているのに加え、同時にカドヘリンを介した細胞-細胞間接着も保っている。また、細胞運動が最終的に止まる局面においては、相対した細胞間に新たなカドヘリン接着が形成される。従って、運動中とその停止の両者においてインテグリンシステムとカドヘリンシステムとに何らかのintercommunicationが存在して然るべきであると考え、この点を解析した。その結果、上皮癌細胞において、インテグリンシグナル蛋白質であるFAKがインテグリン活性化時においてもなおN-カドヘリンを介した細胞間接着を維持することに必要なシグナルを発していることを明らかにし、詳細な分子解剖によって、FAKのTyr861リン酸化が重要であり、それが細胞-細胞間に存在する形質膜におけるRac1の活性を適切に制御することに必要であることを示した。Tyr861リン酸化の下流シグナル分子に関しては現在解析を進めている。(佐邊壽孝) 上皮組織が癌化し、さらに浸潤能を獲得する際に、多くの場合、それまで発現していたE-カドヘリンを失い(もしくは正常なE-カドヘリンの細胞内局在が失われ)、逆に、浸潤性カドヘリン(invasive cadherin)と呼ばれるようなカドヘリンを発現することが良く知られている。N-カドヘリンは浸潤性カドヘリンの代表的なものである。我々は、N-カドヘリンが細胞内小胞輸送過程を制御する事によりE-カドヘリンを負に制御できることを見い出した。現在、このことが上皮癌細胞における細胞運動や浸潤の獲得機序とどのように関連しているのか、研究を継続している。(佐邊壽孝) 昨年度単離したβカテニン・プラコグロビン二重欠損細胞に種々の変異型βカテニンを発現させ、βカテニンがカドヘリン依存性の細胞接着において果たす役割を検討した。その結果、βカテニンはカドヘリン分子が細胞膜で安定に存在するために機能していること、βカテニンのチロシンリン酸化はこれまで考えられているよりもより微妙な接着制御を行っていることを明らかにした。またβカテニンのカルボキシル領域がカドヘリン依存性の細胞接着を制御している新たな可能性が示唆された。一方、p120遺伝子の発現低下細胞の単離にも成功した。この細胞を用いて現在カドヘリンのリサイクリング機能の解明を進めている。(永渕昭良)
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[Publications] H.Watanabe, T.Shimizu, J.Nishihira, R.Abe, T.Nakayama, M.Taniguchi, H.Sabe, T.Ishibashi, H.Shimizu.: "Ultraviolet A-induced production of matrix metalloproteinase-1 is mediated by macrophagemigration inhibitory factor in human dermal fibroblasts."J Biol.Chem.. 279・3. 1676-1683 (2004)
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[Publications] H.Sabe.: "A requirement for Arf6 in cell adhesion and migration, and cancer cell invasion."J.Biochem.Minireview. 134・4. 485-489 (2003)
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[Publications] C.Didier, L.Broday, A.Bhoumik, S.Israeli, S.Takahashi, K.Nakayama, S.M.Thomas, C.E.Turner, S.Henderson, H.Sabe, Z.Ronai.: "RNF5-a RING finger protein that regulates cell motility by targeting paxillin ubiquitination and altered localization."Mol.Cell Biol.. 23・15. 5331-5345 (2003)
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[Publications] H.Sabe.: "The ARF book"(Ed.R.Kahn)Kluwer Academic Publishers.(in press).