2004 Fiscal Year Annual Research Report
構造、配列、代謝情報を基盤とする抗がん性核酸誘導体の設計
Project/Area Number |
12217001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松田 彰 北海道大学, 大学院・薬学研究科, 教授 (90157313)
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Keywords | 固形がん / 放射線 / 代謝拮抗剤 / ECyd / CNDAC / 併用効果 / survivin / Chk1 |
Research Abstract |
CNDACは、その三リン酸体がDNA中に取込まれると、β-脱離反応により一本鎖切断を起こすように分子設計した抗癌性ヌクレオシドである.本研究では、その機序解析を詳細に行い、以下の諸点を明らかにした.1)5種類の血液癌細胞、3種類の固形癌細胞および患者から採取した2種類の繊維芽細胞を用いてG2/M期の割合をCNDAC未処理細胞と処理細胞間で比較したところ、未処理細胞では14〜29%なのに対して処理細胞では33〜55%と有意に増加していた.2)G2期停止に伴って、Chk1のSer-317,Ser-345のリン酸化が起こり、さらにChk1の標的であるCdc25CのSer-216のリン酸化が進行する.その結果、Cdk1のTyr-15がリン酸化されたままになりCyclin B1レベルを上昇させG2期停止に至る.3)CNDAC処理細胞にUCN-01(Chk1阻害剤)を添加すると、G2期細胞の割合が急速に減少し、一時的にG1期細胞が増える.その後、G1期細胞が減少し、アポトーシスが開始される.UCN-01単独ではこのような作用は観察されないので、UCN-01はG2期停止をabrogateし、アポトーシスによる細胞死を大幅に増加させる.4)ML-1細胞をCNDAC処理したところ、二本鎖切断が主に起きていることが明らかになった.この効果もまた、UCN-01添加で増強された.以上のように、CNDACのG2期停止に至る機序の解明とそれに基づくChk1の阻害剤による作用増強が可能になった. がん細胞にX線を照射するとDNAの二本鎖切断を起こすために、G2 checkpoint経路が活性化されG2期で停止し、DNAの修復を待つ.一方、ECydの代謝物であるECyd 5'-三リン酸はRNAポリメラーゼを強力に阻害し、これが引金となりアポトーシスを起こす.この両者を併用した場合に、X-線照射ではヒト胃がん細胞MKN45細胞はネクローシスしか起こさないのに対して、ECydを添加するとアポトーシスへと細胞死の方向を変えることが明らかになった.この機序を明らかにすべく種々検討の結果、ECyd処理により、抗アポトーシス蛋白の一種であり各種がん細胞に高率に発現しているsurvivinがmRNAレベルでも蛋白レベルでも急激に減少することが明らかになった.SurvivinはCdc2-cyclin B1によりリン酸化を受け、M期で抗アポトーシスを発揮しているが、ECyd処理によりsurvivinが合成されなくなったためG2 checkpointが解除され、caspase依存的なアポトーシスが誘導されたと考えられる.
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Research Products
(5 results)