Research Abstract |
成人型早老症として知られるWerner症候群は,骨軟部腫瘍や甲状腺癌などの比較的まれながんが多発することも知られており,老化と癌の関係を解明する上で興味あるモデルである.本症はこれまで,世界中で約1,100例の報告があるが,そのうち900例近くが日本人であり,人種的に近縁の韓国・中国では皆無である.本実態調査では,韓国・中国でWerner症候群の第1例を発見すること,および国民一般集団でのWerner症候群原因遺伝子(WRN)のヘテロでの変異頻度を調査することを目的とする. 本年度は,韓国のソウル大学において,30才以上の骨軟部腫瘍患者,強皮症に白内障を合併した患者,および甲状腺癌の患者を中心に,Werner症候群の発見をめざして検索を開始した.開始に当たりソウル大学を訪問して,腫瘍外科のJae-Gahb Park教授,甲状腺外科のYK Eyoun教授,および整形外科のSang Hoon Lee教授と面会し,Werner症候群に関する講演を行った.また整形外科のSang Hoon Lee教授,臨床病理担当で以前よりWerner症候群に関心を持っているMyoung-Hee Park教授を日本に招聘して,Werner症候群に関する経験を深めた.一方,医師の間でWerner症候群がほとんど知られていないと考えられる中国では,知識の普及をめざして上海第二医科大学リウマチ科Chen Shun-Le教授と連絡を取り,同大学および関連学会で講演などを行った. 一般人におけるWRN変異頻度調査では,Myoung-Hee Park教授が,ソウル大学医科大学付属病院において一般人の血液1,000例を収集し,わが国のWerner症候群で頻度の高い3種の変異(mutation4,6,1,わが国では各々62%,19%,10%)について検討した.その結果,変異は全く見られなかった.
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