2004 Fiscal Year Annual Research Report
クロマチン構造・機能の制御に基づくがん抑制法の開発
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12219205
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Research Institution | RIKEN |
Principal Investigator |
吉田 稔 独立行政法人理化学研究所, 吉田化学遺伝学研究室, 主任研究員 (80191617)
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Keywords | HDAC / FK228 / SCOP / チオール / プロドラッグ / エンドサイトーシス |
Research Abstract |
制がん剤の標的として重要であるヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)には複数のアイソザイムが存在し、それぞれに特異的な阻害剤が望まれている。われわれは微生物由来化合物トリコスタチンA、トラポキシンがはじめての特異的HDAC阻害剤であることを報告してきた。さらに最近、強力な抗がん活性を有し、米国で第2相臨床試験が行われている化合物FK228も特異的なHDAC阻害剤であることを明らかにした。昨年度はFK228が持つ活性基チオールを有する環状テトラペプチド化合物(SCOP)を合成・開発し、それが強力なHDAC阻害剤であること、ジスルフィド体はFK228と同様、安定なプロ体であり、細胞内に入ったのちに細胞内の還元力によって活性化する新しいメカニズムの合成HDAC阻害剤であることを示した。今年はこのSCOPについて、多様な構造を合成してHDAC1(クラスI),HDAC4(クラスIIa),HDAC6(クラスIIb)に対する特異性をテストした結果、非還元条件でHDAC4のみを阻害するものを見出した。このような特異性を有する化合物は初めてであり、今後の発展に期待がもてる。一方、各種HDACアイソザイムの機能解析を進めた結果、HDAC6がエンドサイトーシスを抑制することを見出した。HDAC6の安定なノックダウン肺癌細胞作製したところ、EGF刺激に応答したEGF受容体のダウンレギュレーションが亢進し、EGF受容体の量が低下するとともに、下流のERKが高発現してEGFシグナルの低下を補償することが明らかになった。このことはHDAC6がエンドサイトーシスの制御を通じて受容体シグナル伝達系を調節することを示している。
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