2001 Fiscal Year Annual Research Report
コンクリート構造物の劣化診断および最適補修システムの開発に関する研究
Project/Area Number |
12305029
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
魚本 健人 東京大学, 生産技術研究所, 助教授 (80114396)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
目黒 公郎 東京大学, 生産技術研究所, 助教授 (40222343)
古関 潤一 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (30272511)
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Keywords | 構造物維持管理システム / 塩害 / 化学的浸食 / 劣化診断 / 表面保護材料 / 樹脂注入 / 性能予測 / 最適補修工法 |
Research Abstract |
本研究ではコンクリート構造物の維持管理システムの開発を目的とした。システムは以下の3つのフェーズにより構成される。(1)コンクリート構造物の劣化診断システム(2)コンクリート構造物の性能予測システム(3)最適補修工法選定システム 維持管理システム開発の成果,およびシステム向上に向けて行った研究成果を以下に示す。 (1)コンクリート構造物の劣化診断システムの開発を行った。システム構築においては,ユーザが高い専門知識を有する者でなくても診断が可能なように,画像情報に基づくとの対話方式を採用し,環境条件や劣化状況などの質問項目に答えていくだけで最終的に構造物の劣化原因および現時点における劣化度の判定が行えるものとした。この時,推論エンジンとしてファジー推論を基本とすることにより,ユーザの回答の曖昧さを考慮することを可能とした。 (2)コンクリート構造物の代表的な劣化性状である塩害を対象として,ひび割れを有するコンクリートの鉄筋腐食性状を予測する手法を開発した。本手法は,塩化物イオンの移動を支配する拡散,移流,吸着等の複数の要因を見かけの拡散として簡便に取り扱うことにより,既設構造物の点検時に得られる情報のみで予測することが可能である。なお,乾湿繰り返し環境下への適用は今後の課題として残っている。 (3)コンクリート構造物の劣化性状の中で,最も定量的な評価が遅れている化学的侵食(硫酸)を対象とし性能予測手法の提案を行った。硫酸侵食のメカニズムに与える影響を実験的に把握した結果,結合材の種類,水セメント比および水素イオン濃度で説明できることを明らかとした。これら3つのパラメータを用いて硫酸による侵食速度を予測することを可能とした。なお,本手法においても乾湿繰り返し環境下への適用は今後の課題である。 (4)疲労環境下における各種コンクリート表面保護塗膜による腐食因子防御効果を検討した結果,保護材料のひび割れ追従性により補修工法の選定の適否を判断することが可能であることを明らかとした。また,コンクリートひび割れ部への樹脂注入による耐久性評価および力学的挙動の変化について検討を行った結果,樹脂の注入程度と耐久性能および力学性能の関係が明らかとなった。
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[Publications] 平田隆祥, 魚本健人: "超音波法によるコンクリート構造物のひび割れ調査に関する研究(2) -コンクリート内部の空隙の測定精度-"生産研究. 53巻3号. 46-49 (2001)
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[Publications] 伊代田岳史, 魚本健人: "初期乾燥をうけたセメントペーストの水和・細孔組織に与える高炉スラグの影響"生産研究. 53巻3号. 38-41 (2001)
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[Publications] 蔵重勲, 魚本健人: "硫酸腐食環境におけるコンクリートの劣化特性(2) -浸食および中性化の進行-"生産研究. 53巻3号. 50-53 (2001)
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[Publications] 蔵重勲, 魚本健人: "硫酸腐食環境におけるコンクリートの劣化特性(2) -硬化体中の細孔空隙の影響-"生産研究. 53巻5号. 69-72 (2001)
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[Publications] 古関潤一, 佐藤剛司: "セメント改良土の引張強度特性"生産研究. 53巻11・12号. 49-52 (2001)
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[Publications] 上半文昭, 目黒公郎: "応用要素法によるRC柱弱点個所の補強前後の損傷挙動解析"生産研究. 53巻11・12号. 78-82 (2001)
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[Publications] 星野富夫, 魚本健人: "コンクリート抵抗による耐久性評価に対する実験的検討"土木学会年次学術講演会概要集V. 第56巻. (2001)
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[Publications] 星野富夫, 魚本健人: "ひび割れ樹脂注入したコンクリート梁の強度性状と耐久性に関する研究"コンクリート工学年次論文集. 23巻1号. 451-456 (2001)
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[Publications] Fumiaki UEHAN, Kimiro MEGURO: "Non-liner Numerical Simulation of Natural Frequency Change of Damaged RC Structure Reinforced by Steel Jacket"Bulletin of Earthquake Resistant Structure Research Center, IIS, Univ. of Tokyo. No.34. 113-123 (2001)
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[Publications] 飯塚康弘, 西村次男, 魚本健人: "ひび割れを有するコンクリートに塗布した表面保護材料の100万回及び1000万回疲労実験"コンクリート工学年次論文集. 23巻1号. 427-432 (2001)
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[Publications] 星野富夫, 魚本健人: "コンクリート抵抗による耐久性評価に関する実験的検討"土木学会第56回年次学術講演会概要集V. (2001)