2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12305039
|
Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
益田 兼房 東京芸術大学, 大学院・美術研究科, 教授 (50313317)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神野 善治 武蔵野美術大学, 教授 (70298024)
藤井 恵介 東京大学, 工学部・建築学科, 助教授 (50156816)
田中 淡 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (90000306)
前原 信達 都市科学政策研究所, 地域計画研究室, 室長
赤坂 信 千葉大学, 園芸学部・緑地・環境学科, 助教授 (30143267)
|
Keywords | 東アジア周縁部 / 聖なる空間 / 沖縄 / 文化遺産 / 記憶 / 御嶽 / 地域社会 / 神社建築 |
Research Abstract |
本年度は当初計画にもとづき,1)社寺建築等の文献資料調査,2)本州畿内での神社や沖縄本島離島での御嶽等の現地調査,3)御嶽の実測調査等を行い,次の結果を得た。 1 本州地域と沖縄地域での土着の聖なる空間である神社や御嶽等では,その構成要素や地域社会での意味に大きな相違がある。すなわち,本州畿内では古代大和政権が大陸から仏教を受容し華やかな寺院が建立された結果,それまで自然の山や森自体に神をみてきた神社においても本殿等の建築が建てられようになる。神仏習合の進展に伴い神社での建築はしだいに発展し,中世に畿内惣村では華やかな装飾が神社建築意匠の中心となる。神社は現代では宗教法人となり,その社殿は文化遺産としての保護を受けるに至っている。 2 一方,大和政権の支配の及ばなかった沖縄では,古くからの森や岩などの自然そのものに様々な神を見出し,女性シャーマンが神に仕える信仰が守られつづけ,最近まで御嶽などの聖なる場を中心に,地域社会や各家によって大切に護持されてきた。御嶽では建築は発達しないが常に清らかに清掃され,豊穣等の祈りや芸能を捧げる場として機能してきた。文字を持たない沖縄の土着文化では,渡来し集落移転するなどの重要な地域の歴史や記憶を祭礼行事を通じて地域社会で共有する機能を,これら聖なる空間が保証していた。なお,儒教の強い韓国でも一部地域社会で土着アニミズム信仰を維持している模様である。 3 しかし,沖縄本島地域では戦争で地形が変化し集落が移転消滅したところも多く,基地経済等による都市化もあって地域社会衰退の傾向がすすみ,多くの御嶽が存続の危機に瀕している。伝統行事が衰退し,御嶽の清掃等の管理ができなくなっているところも多く,急増した公共事業費補助により森を伐採してコンクリートで固める公園等の公共事業も各所で急速に進行している。文化財としての評価や都市計画での尊重が今後の課題である。
|