Research Abstract |
13年度は,前年度以来の東アジア周縁部地域のなかでの土着の聖なる空間の比較研究をめざして,1)日本の社寺建築等の文献資料等調査,2)沖縄本島離島の御嶽等の現地調査と文献資料調査,3)北海道アイヌの史跡や民俗芸能,及び台湾での漢民族や少数民族の,現地調査と文献調査,また韓国の文献調査等を行い,新たに次の結果を得た。 1 沖縄地域での土着の聖なる空間である御嶽は,南端に当たる竹富島で最も本来の意味を継承しており,とくに祭礼行事の伝承を通じて地域社会の中で大きな意義を持ち続けている。この島は全体が周囲の珊瑚礁も含めて歴史的環境保全地区として保護されており,そこに散在する御嶽は,島全体の歴史や政治等に関わるもの,氏族集団ごとの歴史に関わるもの,そしてその付属的なより遠い過去につながるもの,の3種類の秩序をもつ。これらを維持する女性シャーマン(神司)は,氏族単位で定員6名が全て選出され,年間を通じて多くの宗教的伝統行事を運営している。その最大の行事は,重要無形民俗文化財(芸能)指定の種子取祭で,その場所となる世持御嶽は集落内の最も高い位置にある。本年度は,これら宗教行事の記録を作成し,御嶽の今後のための保全整備計画も検討した。 2 一方,沖縄でも,本島地域での農村集落では御嶽を支える地域社会の変貌が次第に大きく成りつつあり,神司の選出もできず,公園事業で様々な御嶽空間の再利用が進みつつある現状が判明した。しかし,那覇などの中心市街地でもなお,壷屋地区のように伝統的地域社会が継承されていれば,御嶽は魅力的空間を現代都市に提供しうることが判明した。 3 北海道アイヌ,台湾,韓国については,なお全体像が把握し切れていない状況であるが,祖霊への信仰を軸に,中国大陸漢民族とは異なるアニミズムの聖なる空間が現存すること,その保護について近年関心が高まってきていることが判明した。
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