2002 Fiscal Year Annual Research Report
動的機能分化触媒による革新的還元および炭素結合形成反応の開発
Project/Area Number |
12305057
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
碇屋 隆雄 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (30107552)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 正人 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助手 (20293037)
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Keywords | 分子触媒 / 金属ヒドリド錯体 / 酸塩基複合効果 / 動的機能分化 / 二酸化炭素挿入反応 / C-H結合活性化 / 触媒的C-C結合形成 / 不斉クラスター触媒反応 |
Research Abstract |
1 動的機能分化型触媒の開発を目指して配位子の改良や中心金属の選択を検討した結果、種々の光学活性アミノホスフィン配位子を有する新規不斉Ru触媒の開発に成功した。高い水素活性化能を有するこの不斉触媒は、環状イミド類やN-アシルラクタム類の選択的水素化を促進することを見いだした。この方法は合成的に有用なガブリエルアミノ酸合成やエバンス反応における還元的分子変換法として有用であることがわかった。 2 光学活性ジアミン配位子を有する不斉Ru触媒による不斉還元反応の適用範囲を拡大した結果、α位にシアノ基、ニトロ基およびクロロ基を有するアセトフェノンが、高い選択性で還元され対応する光学活性アルコールを収率よく与えることを見いだした。これらのアルコール類は常法により光学活性アミノアルコールや光学活性エポキシ化合物へと変換されることから、本不斉還元法が実用的に優れていることを示す結果であるといえる。 3 配位飽和な不斉アミンヒドリド錯体がブレンステッド塩基性を有することから、分子内の芳香族C-H結合を活性化してシクロメタレーションを引き起こし、新たな金属-炭素結合を有する錯体を与えることを見いだした。これは動的機能分化型分子触媒のもつ新たな機能として注目される。 4 光学活性ジアミン配位子を有するRu錯体が、マロン酸ジエステル環状エノン類とのマイケル反応の触媒として極めて有効であることを見いだした。この反応は基質/触媒比100の条件でも室温で円滑に定量的に99%以上の光学純度をもつ生成物を与える。触媒中間体として金属-炭素結合を有する新たなマロネート錯体が得られることから、これを鍵とする触媒的炭素-炭素結合形成反応が進行しているものと考えられる。この結果は動的機能分化型触媒反応の新たな展開として興味深い。 5 金属-金属結合を有する不斉クラスター触媒へ動的機能分化効果を展開した結果、Ruカルボニルクラスターとリンと窒素原子を含む光学活性4座配位子の二元系触媒が、カルボニル化合物の水素移動型不斉還元反応の触媒として有効であることが分かった。この反応において、クラスター骨格を維持したまま触媒機能が働いているものと考えている。
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[Publications] K.Murata, H.Konishi, M.Ito, T.Ikariya: "Deprotonation of Organic Compounds Bearing Acid Protons Promoted by Metal Amido Complexes with Chiral Diamine Ligands Leading to New Organometallic Compounds"Organometallics. 21. 253-255 (2002)
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[Publications] M.Watanabe, K.Murata, T.Ikariya: "Practical Synthesis of Optically Active Amino Alcohols via Asymmetric Transfer Hydrogenation of Functionalized Aromatic Ketones"J. Org. Chem.. 67. 1712-1715 (2002)
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[Publications] H.Zhang, C.B.Yang, Y.Y.Li, Z.R.Dong, J.X.Gao, H.Nakamura, K.Murata, T.Ikariya: "Highly Efficient Chiral Metal Cluster Systems Derived from Ru_3(CO)_<12> and Chiral Diiminodiphosphines for the Asymmetric Transfer Hydrogenation of Ketones"Chem. Commun.. 142-143 (2003)