2001 Fiscal Year Annual Research Report
走査フォトン顕微鏡で拓く単一分子鎖の高分子科学-分子形態と集合状態の非統計的観察
Project/Area Number |
12305061
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 紳三郎 京都大学, 工学研究科, 教授 (50127049)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大岡 正孝 京都大学, 工学研究科, 教務技官 (10160425)
大北 英生 京都大学, 工学研究科, 助手 (50301239)
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Keywords | 走査フォトン顕微鏡 / 高分子構造 / 近接場光学 / 超薄膜 / 単一分子 / 分光分析 / 相分離 / ナノ構造 |
Research Abstract |
本研究では、走査フォトン顕微技術を高分子に適用することにより、高分子鎖の分子形態、構造、集合状態についてナノスケールでの構造観測を可能にすることを目的としている。多数の分子集団の統計的な平均値ではなく、非統計的なミクロ構造を明らかにすることにより、分子レベルから高分子構造・物性を探究する新しい高分子科学を開拓することを目指している。 初年度において、主要機器である走査フォトン顕微鏡を実用的な計測機器として確立することができた。本年(第2年度)においてはこれをもとに、2種類の系において単一高分子鎖の観測に着手した。その一つとして、一般的な合成高分子であるメタクリレート系高分子を選択し、分子量100万程度の分子鎖に蛍光ラベルを施した。SNOMにより、分子鎖1本1本がスポットとして観測され、像から分子鎖の空間分布を、輝度から各分子量を評価できること、1分子が単分子膜中で凝縮した形態をとること、媒体の分子量が低下するとともに広がる傾向にあることが示された。また2つ目の系としてDNA鎖の観測を行った。カチオン性基板に吸着したDNA鎖をBOBOにより染色することにより、吸着状態の単一DNA鎖を検出するとともに、流動吸着により高度に配向させ延伸させることができた。これは光学的な手法によりナノスケールでの塩基配列の検出を可能にする技術として着目される。 その他、次世代の走査型フォトン顕微鏡として、UV光を用いるSNOMの開発に着手した。これは使用する光の波長を短波長にすることによりSNOMの分光分析能力を飛躍的に拡大することを目指したものであり、次年度の研究課題の基盤整備を行った。
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[Publications] 青木 裕之: "SNOMによる高分子系のナノ構造解析"レーザー研究. 29. 717-721 (2001)
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[Publications] H.Aoki: "Two-Dimensional Polymers Investigated by Scanning Near-Field Optical Microscopy : Phase Separation of Polymer Blend Monolayer"J.Phys.Chem., B. 105. 4558-4564 (2001)
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[Publications] S.Ito: "UV-SNOM Characterization of Polymer Chains in an Ultrathin Monolayer"Tran.Materials Res.Soc.Jpn.. 26. 929-932 (2001)
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[Publications] 伊藤 紳三郎: "走査型近接場光学顕微鏡(SNOM)の開発と高分子科学への応用"日本化学繊維研究所講演集. 58. 43-52 (2001)
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[Publications] 伊藤 紳三郎: "ナノ光学ハンドブック"朝倉書店. (2002)