2000 Fiscal Year Annual Research Report
ストレスタンパク質からみた身体運動の評価(その3)-運動が引き起こす体内の機械的・物理的刺激との関係、構成的発現と身体運動、強制発現の影響-
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12308001
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
跡見 順子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (90125972)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新井 秀明 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (60313160)
八田 秀雄 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (60208535)
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Keywords | 運動負荷 / 酸素摂取量 / 実験動物 / エネルギー代謝 / 無酸素性作業閾値 |
Research Abstract |
これまでの本タイトルでのラットを用いた研究により、(1)トレッドミル走により運動後肝臓・腎臓・骨格筋にHSP70のmRNAが発現すること、(2)高強度の運動後に肝臓由来の逸脱酵素GPTの上昇および肝臓でのHSP72タンパク質の発現の上昇がみられること、(3)後肢懸垂により低分子量ストレスタンパク質の減少とともに細胞骨格・微小管の特異的減少が見られることなどを報告してきた。これらのラットを用いた研究は後肢懸垂など適応による骨格筋特異的な顕著な変化の検出には適しているが、一過性の走運動の効果の検出には問題があることが判明した。安静時のHSPレベルには非常に大きな個体差が観察され、運動刺激への適応機構を探る上ではより再現性の高い実験条件の検討が必要であることがわかった。そのため本年度は抜本的なモデルの再検討を行った。従来よく使われているクローズドコロニーのラットを対象にした実験動物系に替え、遺伝的に均質な近交系実験動物(マウス)を用いた運動動物実験系の開発を行った。高感度のガスセンサーを用いてトレッドミル走を行っているマウスの酸素摂取量および二酸化炭素排出量を測定し、特定の近交系マウスの運動負荷にともなうエネルギー代謝の変化を詳細に検討し、ストレス応答の評価に必要な最大酸素摂取量と乳酸性作業閾値LT(または換気性作業閾値VET)の測定方法の確立を目指した。小動物では換気量の測定が困難なため酸素摂取量と二酸化炭素量の比から呼吸交換率比作業域値VCO2Tを求め、LTとの対応を評価した。その結果LTよりも低い強度の運動では、たとえ遺伝的に均質な動物であってもエネルギー代謝の尺度となる指標は大きく環境条件に依存することがわかった。来年度は、これらの知見をもとに運動負荷を決定し、運動負荷にともなう各臓器・組織でのHSPレベルの変化を検討する予定である。
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Research Products
(17 results)
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[Publications] Atomi,Y.,Ohto,E.,Fujita,Y.,Terada,N.and Tanaka,M.: "Tension development-Structure Formation Coupling by Molecular Synchronization in Cytoskeleton of Muscle Cell-Analysis from a key factor of Molecular Chaperone Responding to Mechanical Stimuli."新しい材料システム構築のための分子シンクロナイゼーション平成12年度成果報告書. 203-204 (2001)
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[Publications] 跡見順子,大戸恵理,田中幹人,藤田義信,寺田尚史: "細胞のストレス応答からみた重力適応機構:GFP-融合タンパク質を利用した細胞及び細胞骨格の可視化とダイナミクス"宇宙利用シンポジウムプロシーティング第17回. 182-185 (2001)
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[Publications] 跡見順子: "「21世紀における体力科学の将来展望」の実現に向けて"体育の科学. 第51巻第1号. (2001)
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[Publications] 跡見順子: "身体がいのちと脳をはぐくむ"朝日新聞論壇朝刊15主張・解説12版. (2000)
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[Publications] 村上小百合,本間恭二,跡見順子: "機械的刺激を受けた筋芽細胞の動的応答"日本機械学会論文集. 66巻647号A編. 1432-1438 (2000)
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[Publications] E.Ohto,Y.Fujita,Y.Atomi.: "Domain analysis of alpha B-crystallin for chaperone-like activity : oligomerization and substrate specificity."Molecular Biology of the Cell. 11. 119a (2000)
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[Publications] M.Harimoto,M.Hirose,T.Hayashi,and Y.Atomi: "Maintenanceof a round cell shape and physiological responsiveness to Insulin of matureadipocytes by culturing in type I collagen gel"Connective Tissue. 32. 11-15 (2000)
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[Publications] Atomi,Y.,Toro,K.,Masuda,T.and Hatta,H.: "Fiber-type-specific aB-crystallin distribution and its shifts with T3 and PTU treatments in rat hindlimb muscles."J.Appl.Physiol. 88. 1355-1364 (2000)
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[Publications] 跡見順子: "生命科学的な身体・心身の理解から体育・スポーツ科学の普遍性と独自性を"21世紀と体育・スポーツ科学の発展 日本体育学会第50回記念大会誌. 1. 24-33 (2000)
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[Publications] Atomi,Y.: "Creation of Generality and Originality of Physical Education and Spor Science through Understanding of Body and Mind from Life Science."InXXX(調査中). (1999)
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[Publications] Atomi,Y.: "Why active life is important for health and longevity?-From the studies of stress protein and mechanicalstress-."In Current Reviews of Medical Science by Women. 150-153 (1999)
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[Publications] Atomi,Y.,Tanaka,M.: "Sense and antisense alpha B-crystallin expression in L6 myoblasts and C6 glioma cells results in different cell motility dependent on MT/Actin stability."Mol.Biol.Cell.. 10. 381a (1999)
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[Publications] Tanaka,M.Atomi,Y.: "Cellular characteristics of aB-cystallin overexpress/suppressed myoblasts and its cytoskeletal relevance."Advancesin Exercise and Sports Physiology. 4. 117 (1999)
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[Publications] 跡見順子: "連載 生命科学から見るスポーツ「ストレッチは、なぜよいか」月刊スポーツメディスン28号"ブックハウス・エイチディ. 5(48) (2001)
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[Publications] 跡見順子: "新連載 生命科学から見るスポーツ「なぜ、生命科学を知ったほうがよいか」Sportsmedicine2000No.27"ブックハウス・エイチディ. 5(48) (2000)
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[Publications] 跡見順子,大野秀樹,伏木亨 編著: "身体運動・栄養・健康の生命環境科学 Q&A シリーズ 「骨格筋と運動」"杏林書院. 128(164) (2000)
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[Publications] 東京大学身体運動科学研究室 編: "教養としてのスポーツ・身体運動"東京大学出版会. 233 (2000)