2001 Fiscal Year Annual Research Report
ストレスタンパク質からみた身体運動の評価(その3)-運動が引き起こす体内の機械的・物理的刺激との関係、構成的発現と身体運動、強制発現の影響-
Project/Area Number |
12308001
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
跡見 順子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (90125972)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新井 秀明 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (60313160)
八田 秀雄 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (60208535)
|
Keywords | ストレスタンパク質 / HSP72 / LT(Lactate Threshold) / 副腎 / ACTH / HPA軸 / C57B6マウス / 機械刺激 |
Research Abstract |
通常運動実験はラットを用いて行われている。ラット後肢懸垂モデルは簡便で再現性があり大変良いモデルであった。しかしAerobicsのような日常レベルで行われる運動への効果をHSP72の発現から検討した結果、対照となる安静初期状態で大きな変動がみられ、かつ運動適性が個体ごとに異なり、実験系として不適切であることが明らかとなった。個体差のうち遺伝的ばらつきを減らすために遺伝子背景の均一なC57B6に対する運動実験系を立ち上げ、VO2maxとLT(Lactate Threshold)の測定を可能にした。とくにLTは全身のストレス応答系、筋線維タイプ、代謝系の変曲点でもある。本年度は個体のストレスとの関係を知るためにHPA軸(視床下部-交感神経-副腎系)副腎でのHsp70を中心とした発現をVo2-VCo2関係から決定したLT前後の両強度の30分の運動後の変化により検討した。その結果、LT上で走らせたマウスの副腎においては、いずれのHSPsも対照と比較し大きな変化がなかったが、LT以下強度で走らせた群においては誘導型のHSP72の量が運動後3、6時間で有意に増加した。先行研究では、拘束ストレスを与えた場合にはACTHが上昇し副腎皮質でHSP70の遺伝子発現の増大が報告されている。これらの結果から、(1)LT以上の運動では、副腎においてACTHがHSP70を誘導する過程のいずれかに阻害的に働く因子が存在する、(2)低強度運動においては、ACTH以外のHSP70を誘導する因子が存在することが示唆された。運動は、副腎に対してその強度に依存した異なった効果を持つが、いずれの場合にも副腎機能を調節しうる可能性が示唆された。このことから、運動が代謝に対してのみならず、機械刺激のようなロコモーションに関わる他の因子へも影響を及ぼすことを分子レベルで示すものと考えられる。
|
Research Products
(19 results)
-
[Publications] 跡見順子: "生命科学から考える運動の意義-動物細胞の本質と運動の本質・"ダイナミクス"の意味-"第8回日本運動生理学会/第16回日本バイメカニクス学会合同学会大会大阪2000論集. 136-145 (2001)
-
[Publications] 跡見順子: "自分の身体の「理^^<ことわり>」を理解するスポーツ・身体運動 サイエンスコース授業のこころみ-ヒューマンサイエンスの基盤としての動く動物としてのヒトと、脳と一体の体の理解をめざす-"大学体育. 74. 119-126 (2001)
-
[Publications] 跡見順子: "身体^^<からだ>と運動-身体がいのちと脳をはぐくむ-"東京女子大学学会ニュース. 123. 875-876 (2001)
-
[Publications] Murakami, S., Homma, K., Atomi, Y.: "Dynamic Response to Mechanical Stimulation In Myoblasts"JSME International Journal Series C. 44. 920-927 (2001)
-
[Publications] 跡見順子: "遺伝子に対する運動の影響 〜生きていること・運動していることは絶え間ない遺伝子への働きかけである〜"体育の科学. 51. 694-703 (2001)
-
[Publications] 跡見順子: "「細胞から個体まで考える体育教育研究を目指す」-骨・骨格筋・血管をつくる細胞の運動刺激への応答と適応の機構-"日本体育学会. 3. 12-13 (2001)
-
[Publications] 跡見順子, 大戸恵里, 藤田義信, 田中幹人, 寺田尚史: "GEP-融合タンパク質を利用した細胞及び細胞骨格の可視化とダイナミクス"宇宙利用シンポジウム. 17. 182-185 (2001)
-
[Publications] 跡見順子, 藤田義信, 田中幹人, 大戸恵里, 新井秀明: "チューブリン・微小管ダイナミクスとαB-クリスタリン"宇宙生物化学. 15. 206-207 (2001)
-
[Publications] Y.Atomi, Y.Fujita: "αB-Crystallin associates with microtubules/tubulin and increases to MT stability in myoblast and glioma cells"Mol. Biol. Cell. 12. 47a (2001)
-
[Publications] 播元雅美, 跡見順子: "成熟脂肪細胞とI型コラーゲン線維との相互作用"運動生化学. 11/12. 47-48 (2001)
-
[Publications] 田中幹人, 跡見順子: "αB-クリスタリン発現制御細胞の様態"運動生化学. 11/12. 49-52 (2001)
-
[Publications] 大戸恵里, 藤田義信, 跡見順子: "チューブリン凝集抑制効果に関するαB-クリスタリンドメインの検討"運動生化学. 11/12. 53-56 (2001)
-
[Publications] 跡見順子: "連載 生命科学から見るスポーツ 「エアロビクスの不思議 [中編]」 月刊スポーツメディスン31号"ブックハウス・エイチディ. 5(52) (2001)
-
[Publications] 跡見順子: "「100年を生きるための脳と身体を育てる」 科学 Vol.71 No.6"岩波書店. 4(854) (2001)
-
[Publications] 跡見順子: "連載 生命科学から見るスポーツ 「エアロビクスの不思議[後編]」月刊スポーツメディスン32号"ブックハウス・エイチディ. 5(52) (2001)
-
[Publications] 跡見順子: "連載 生命科学から見るスポーツ 「エアロビクスの不思議[完結編]」 月刊スポーツメディスン33号"ブックハウス・エイチディ. 4(52) (2001)
-
[Publications] 大野秀樹, 井澤鉄也, 長澤純一, 伏木亨, 跡見順子, 佐藤祐造, 芳賀脩光 編著: "運動生理・生化学事典"大修館書店. 525 (2001)
-
[Publications] 跡見順子: "連載 生命科学から見るスポーツ 「ストレス その1 ストレスを論じる前に」 月刊スポーツメディスン38号"ブックハウス・エイチディ. 4(52) (2002)
-
[Publications] 跡見純子: "連載 生命科学から見るスポーツ 「エアロビクスの不思議[全編]」 月刊スポーツメディスン30号"ブックハウス・エイチディ. 5(52) (2002)