2002 Fiscal Year Annual Research Report
東アフリカにおけるグローバル化過程と国民形成に関する地域民族誌的研究
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12371005
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Research Institution | Siebold University of Nagasaki |
Principal Investigator |
松園 万亀雄 県立長崎シーボルト大学, 国際情報学部, 教授 (00061408)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田 亮 成城大学, 文芸学部, 教授 (50214143)
小馬 徹 神奈川大学, 外国語学部, 教授 (40145347)
中林 伸浩 金沢大学, 文学部, 教授 (30019848)
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Keywords | 文化人類学 / 復興王国 / 互助組織 / 寡婦相続 / 家族計画 / 国際研究者交流 / ケニア / ケニア |
Research Abstract |
第3年度にあたる本年度では、国家主導の社会・文化変化が東アフリカ都市・農村住民の日常生活、とくに経済、信仰、生活倫理の中に浸透している状況を具体的に把握し、『外からの変化』に対する住民の内発的・主体的な適応戦略を明らかにするための実地調査を行った。昨年度に引き続き松園はケニア・グシイ社会で寡婦相続制度の変容を、小馬はケニア・キプシギス社会で経済的な互助組織を、中林はウガンダ・ブソガ社会において復興王国の組織とキリスト教会の変容について調査した。本年度の調査成果として、以下のことが明らかとなった。 1.国家と民間団体が展開している家族計画運動は、伝統的な寡婦相続の慣行にも大きな影響を与えている。すなわち、民族社会全体の視点からいえば土地に対する人口圧を軽減するために、個人の視点からいえば相続する土地面積の狭小化を避けるために、多くの若い寡婦が避妊を実践するようになった(グシイ)。 2.構造調整と経済自由化を遠因として独占的な乳業公社が破綻した結果、個人を糾合した地域横断的な互助集金組織としての頼母子講が各地に組織されている。定期的に拠出金を確保するべく頼母子講の会員はこれまでにない労働意欲を見せているが、同時に資本主義的な論理の浸透にともない住民は近代的な価値や文化を体得しつつあり、かつての共同体的な生活倫理は急速に変容しつつある(キプシギス)。 3.ウガンダでは近年、廃止されていた国内の旧王国が各地で復興され、王は政治指導者ではなく「文化的指導者」として位置付けられている。ブソガ王は憲法を制定したが、地域住民の強固な支持を得るには至っていない。王国復興は国内諸民族の民族意識の強化に一定の役割を果たしているが、それは政府が容認する範囲内のことである。王国の活動は常にウガンダ中央政府の監視下に置かれており、王や旧首長がかつての土地権を主張すれば政府との緊張関係が生じかねない(ウガンダ・ブソガ)。
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Research Products
(22 results)
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[Publications] 松園万亀雄: "民族誌と個性:フィールドワークにおける「私」をめぐって"社会人類学年報. 28. 5-11 (2002)
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[Publications] Matsuzono, Makio: "Anthropology and International Cooperation Activities : Some Problems in Japan's Context"Technology and Development. 14. 5-11 (2001)
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[Publications] 中林伸浩: "キリスト教文化とアフリカ農民--20世紀のケニア"金沢大学文学部論集 行動科学・哲学編. 20. 29-64 (2000)
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[Publications] 小馬 徹: "ポストコロニアルの現場としての自治体"神奈川大学評論. 40. 112-116 (2001)
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[Publications] 小馬 徹: "関係を開くトーテミズム、鎖すインセスト"進歩人類学分科会ニュースレター. 3. 25-28 (2001)
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[Publications] 小田亮: "生活世界の植民地化に抗するために"日本常民文化紀要. 22. 1-43 (2001)
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[Publications] 松園万亀雄ほか(松園万亀雄編): "『性の文脈』(松園執筆担当部分「総説:性を文化の脈絡で考える」"雄山閣. 253(3-22) (2003)
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[Publications] 松園万亀雄ほか(松園万亀雄編): "『性の文脈』(松園執筆担当部分「夜はそんなに長くない:グシイの多産戦略と性」"雄山閣. 253(110-152) (2003)
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[Publications] 松園万亀雄ほか(松園万亀雄編): "『東アフリカにおける国家主導の社会・文化変化と地域的適応に関する動態論的研究』(松園執筆担当部分「Clan and Ethnic Relationship in Gusii Soapstone Industry」"科学研究費補助金研究成果報告書. 136(1-15) (2001)
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[Publications] 松園万亀雄ほか(「少年ケニアの友」東京支部編): "『アフリカを知る』(松園執筆担当部分「アフリカにおける『思春期』--変化する社会とセクシュアリティ」"スリーエーネットワーク. 226(94-105) (2000)
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[Publications] 中林伸浩ほか(松園万亀雄編): "『東アフリカにおける国家主導の社会・文化変化と地域的適応に関する動態論的研究』(中林執筆担当部分「Church and State in Western Kenya : A Local Development Pattern of Christian Denominations」"科学研究費補助金研究成果報告書. 136(61-74) (2001)
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[Publications] 小馬徹ほか(小馬徹編): "『カネと人生』(小馬執筆担当部分「総説:カネの論理とさまざまな人生の形」"雄山閣. 283(3-22) (2002)
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[Publications] 小馬徹ほか(小馬徹編): "『カネと人生』(小馬執筆担当部分「人間とカネ:コイン1枚からの出会い」"雄山閣. 283(123-51) (2002)
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[Publications] 小馬徹ほか(小馬徹編): "『カネと人生』(小馬執筆担当部分「走れそびれたランナーたち:牛牧民キプシギスの一世紀」"雄山閣. 283(210-244) (2002)
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[Publications] 小馬徹: "贈り物と交換の文化人類学--人間はどこから来て、どこへ行くのか"御茶の水書房. 70 (2001)
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[Publications] 小馬徹: "Nationalism and Sub-Nationalism in Kenya : With Special Reference to the Kipsigis and Isukha"Max-Planck Institute for Social Anthropology. 1-24 (2001)
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[Publications] 小馬徹ほか(和田正平編): "『現代アフリカの民族関係』(小馬執筆部分「イニシエーションの現在とアイデンティティ・・・キプシギスの場合」"明石書店. 563(406-438) (2001)
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[Publications] 小馬徹ほか(川田順造編): "『近親性交とそのタブー』(小馬執筆部分「性と『人間』という論理の彼岸」"藤原書店. 241(169-197) (2001)
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[Publications] 小馬 徹ほか(松園万亀雄編): "『東アフリカにおける国家主導の社会・文化変化と地域的適応に関する動態論的研究』(小馬執筆担当部分「キプシギスの農民化と村化」"科学研究費補助金研究成果報告書. 136(16-38) (2001)
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[Publications] 小田 亮ほか(松園万亀雄編): "『東アフリカにおける国家主導の社会・文化変化と地域的適応に関する動態論的研究』(小田執筆担当部分「クリアにおける儀礼の衰退と変形」"科学研究費補助金研究成果報告書. 136(75-87) (2001)
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[Publications] 小田亮ほか(嶋根克己, 藤村正之編): "『非日常を生み出す文化装置』(小田執筆担当部分「グロテスクなものとしての資源的世界・・・周縁性の詩学と『切断』という戦術」"北樹出版. 196(178-194) (2001)
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[Publications] 小田亮ほか(杉島敬志編): "『人類学的実践の再構築・・・ポストコロニアル回転以後』(小田執筆担当部分「越境から、境界の再領土化へ」"世界思想社. 392(297-321) (2001)