2003 Fiscal Year Annual Research Report
東アフリカにおけるグローバル化過程と国民形成に関する地域民族誌的研究
Project/Area Number |
12371005
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
松園 万亀雄 国立民族学博物館, 館長 (00061408)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田 亮 成城大学, 文芸学部, 教授 (50214143)
小馬 徹 神奈川大学, 外国語学部, 教授 (40145347)
中林 伸浩 金沢大学, 文学部, 教授 (30019848)
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Keywords | 文化人類学 / 石彫産業 / 王国復興 / 文化的アイデンティティ / 血償 / 慣習法 / 国際研究者交流 / ケニア:ウガンダ |
Research Abstract |
最終年度にあたる本年度は、松園はケニア・グシイ社会で石彫産業の民族構成について、中林は主にウガンダ・ブソガ社会で王国復興の社会・政治的脈絡について、小馬はケニア・キプシギス社会とウガンダ、セベイ社会で慣習法による血償支払手続の変容について調査を行った。本年度の調査成果として以下のことが明らかになった。 1.ケニアのグシイ社会で最大の観光産業は滑石を使う石彫であるが、近年、クリア、ルイヤ、カンバなどのバントゥ系民族も石彫制作に参与している。しかし彼らは土地所有を認められず、原料である滑石の購入や作業場の設営、住居の賃貸費でも不利な立場におかれている。一方で、グシイに隣接するナイル系ルオは対照的に、石彫制作に全く関与していない。言語を含む文化的な親縁性の有無がこうした状況を生み出している。 2.ウガンダにおける王国復興は、歴史伝承などを正統性の根拠とし、伝統的な親族組織の活動と連携関係をもつなどの点で幅広い文化復興の一部として位置づけられるが、それと同時に現政権の無党政治(ローカル・カウンシル方式)と相補的関係にある。つまり、政党政治への回帰を睨む国内の動きを伝統的・文化的リーダーの復活という政策でかわす意図がある。現代のブソガ社会にみられる文化的アイデンティティの意識の高揚は、そうした国家政策に呼応した部分がある。 3.ケニアのキプシギス社会では、慣習法による血償の支払制度が維持されている。だが、支払条件をめぐる地域内部の意見対立やケニア特有の二重法制化における慣習法運用の不確定状況が顕著になり、近年の血償手続には様々な社会的葛藤が介在する。他方、ウガンダのセベイ社会における血償の支払は、氏族の結束を強化する場としてその積極的意義が高まりつつある。両社会とも国家法とは別に慣習法による手続を確保しているが,その社会的機能は、地域社会固有の政治的・歴史的脈絡に条件づけられている。
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Research Products
(34 results)
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[Publications] Matsuzono, Makio: "Anthropology and International Cooperation Activities : Some Problems in Japan's Context"Technology and Development. 14. 5-11 (2001)
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[Publications] 松園万亀雄: "民族誌と個性--フィールドワークにおける「私」をめぐって"社会人類学年報. 28. 1-25 (2002)
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[Publications] 中林伸浩: "キリスト教とアフリカ農民--20世紀のケニア"金沢大学文学部論集(行動科学・哲学篇). 20. 29-64 (2000)
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[Publications] 中林伸浩: "キリスト教文化とアフリカ農民(2)--サブナショナリズムについて"金沢大学文学部論集(行動科学・哲学篇). 21. 19-31 (2001)
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[Publications] 中林伸浩: "イスハ諸教会の分布と宗教的多元性--キリスト教文化とアフリカ農民(3)"金沢大学文学部論集(行動科学・哲学篇). 23. 1-26 (2003)
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[Publications] 小馬徹: "ポストコロニアルの現場としての自治体"神奈川大学評論. 40. 29-64 (2000)
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[Publications] 小馬徹: "関係を開くトーテミズム、鎖すインセスト"進歩人類学分科会ニュースレター. 3. 25-28 (2001)
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[Publications] 小馬徹: "クシャミの比較民族学"歴史と民俗. 19. 99-146 (2003)
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[Publications] 小馬徹: "ケニアッタの椅子--そして法科大学院"神奈川大学評論. 44. 252-267 (2003)
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[Publications] 小馬徹: "フィールドワークと「私」"モナド. 23. 3-8 (2003)
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[Publications] 小馬徹: "「さかい」と「あいだ」の論理--言語の人類学的側面"歴史と民俗. 20. 49-78 (2004)
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[Publications] 小田亮: "生活世界の植民地化に抗するために"日本常民文化紀要. 22. 1-43 (2001)
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[Publications] 小田亮: "文化人類学からみたカルチュラル・スタディーズ--文化・民族誌・ポストコロニアル"日本常民文化紀要. 23. 1-46 (2003)
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[Publications] 小田亮: "二元論とその批判が隠蔽すること--あるいは「抵抗」という概念について"社会人類学年報. 29. 1-26 (2003)
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[Publications] 小田亮: "関係性としてのポリフォニー--複数性と過剰性について"文化人類学研究. 4. 57-65 (2003)
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[Publications] 松園万亀雄ほか: "アフリカを知る(少年ケニアの友東京支部編)"スリーエーネットワーク. 226 (2000)
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[Publications] 松園万亀雄, 中林伸浩, 小馬徹, 小田亮ほか: "東アフリカにおける国家主導の社会・文化変化と地域的適応に関する動態論的研究(科学研究費補助金[基盤研究(A)(2)]研究成果報告書)(松園万亀雄編)"東京都立大学人文学部. 136 (2001)
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[Publications] 松園万亀雄ほか: "性の文脈(くらしの文化人類学4)(松園万亀雄編)"雄山閣. 253 (2003)
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[Publications] 松園万亀雄, 小馬徹ほか: "文化人類学(江渕一公, 松園万亀雄編)"放送大学教育振興会(印刷中). (2004)
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[Publications] 中林伸浩ほか: "神話と歴史の間で(歴史を問う1)(上村忠雄ほか編)"岩波書店. 265 (2002)
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[Publications] 小馬徹: "贈り物と交換の文化人類学"御茶の水書房. 70 (2001)
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[Publications] 小馬徹: "Nationalism and Sub-Nationalism in Kenya : With Special Reference to Kipsigis and Isukha"Max-Plank Institute for Social Anthropology. 24 (2001)
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[Publications] 小馬徹ほか: "現代アフリカの民族関係(和田正平編)"明石書店. 563 (2001)
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[Publications] 小馬徹ほか: "近親性交とそのタブー(川田順造編)"藤原書店. 241 (2001)
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[Publications] 小馬徹ほか: "カネと人生(くらしの文化人類学5)(小馬徹編)"雄山閣. 283 (2002)
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[Publications] 小馬徹ほか: "系図が語る世界史(シリーズ歴史学の現在8)(歴史研究会編)"青木書店. 398 (2002)
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[Publications] 小馬徹ほか: "宗教と権威(天皇と王権を考える4)(網野善彦編)"岩波書店. 293 (2002)
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[Publications] 小馬徹ほか: "ポストコロニアルと非西欧世界(神奈川大学評論叢書第10巻)(神奈川大学評論編集委員会編)"御茶の水書房. 351 (2002)
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[Publications] 小馬徹ほか: "生と死の現在--家庭・学校・地域のなかのデス・エデュケーション(竹田純郎編)"ナカニシヤ出版. 288 (2002)
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[Publications] 小馬徹ほか: "日向写真帖--家族の数だけ歴史がある(日向市史別編)"日向市. 487 (2002)
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[Publications] 小田亮ほか: "非日常を生み出す文化装置(嶋根克己ほか編)"北樹出版. 196 (2001)
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[Publications] 小田亮ほか: "人類学的実践の再構築--ポストコロニアル転回以後(杉島敬志編)"世界思想社. 392 (2001)
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[Publications] 小田亮ほか: "「野生」の誕生(スチュアート・ヘンリ編)"世界思想社. 280 (2003)
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[Publications] 小田亮ほか: "<都市的なるもの>の現在(関根康正編)"東京大学出版会. 529 (2004)