2000 Fiscal Year Annual Research Report
古代エジプト、アブ・シール南丘陵頂部遺跡の保存計画に関する基礎的研究
Project/Area Number |
12371011
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
吉村 作治 早稲田大学, 人間科学部, 教授 (80201052)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西本 真一 早稲田大学, 理工学部, 助教授 (10198517)
中川 武 早稲田大学, 理工学部, 教授 (30063770)
近藤 二郎 早稲田大学, 文学部, 助教授 (70186849)
齊藤 正憲 日本学術振興会, 特別研究員
柏木 裕之 武蔵野女子大学, 短期大学部, 講師 (60277762)
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Keywords | 第18王朝 / 彩画片 / アマシス / 末期王朝時代 / 日乾煉瓦遺構 / 石造建造物 / 保存修復計画案 / 保存科学的解析 |
Research Abstract |
本年度は、7月から9月にかけて現地調査を実施した。発掘作業を継続したが、これは遺跡の歴史的変遷の全貌を解明するためである。結果、第18王朝中期のファラオが建てたと思われる日乾煉瓦遺構の全体像が明らかになった。すなわち、この建造物は地山を基壇状に削りだしたマウンドの上に築造され、さらにそのマウンドの裾には、溝を巡らせていたことが明らかとなった。 また、大量に出土した彩画片はかつてこの建造物が鮮やかに彩られていたことを示唆しており、その他、ファイアンス・タイルや青色彩文土器などの出土遺物と合わせ、往時の建造物に関する重要な情報を得ることができた。さらに、第26王朝のファラオ、アマシスの銘の刻まれたシストラムが出土したことは、当遺跡が末期王朝時代にも人間活動の舞台となっていたことを示唆している。 本年度、発掘調査を継続したことで、調査地区全体の発掘を完了することができ、結果的に当遺跡における遺構分布のあり方に一定の結論をつけることができるようになったことは、本計画における大きな進捗と評価できる。 また、すでに全体的な発掘を終えていた石造建造物についても、出土石材の詳細な記録作業が継続された。石造建造物については、一刻も早く保存措置を講じる必要があると認識されていたが、本年度の作業によって記録作業をほぼ完遂することができた。 同時に、本計画の第一の課題である保存修復計画案の策定のために、各種の保存科学的解析を試みた。具体的には、出土石材の岩石学的な検討を試みた他、温湿度の計測などを行ない、さらに周辺における遺跡保存の現状を視察した。ここで得られた知見は、保存修復計画案に反映される予定である。 また春期には遺跡の状況を観察するとともに、各種比較調査を実施した。
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[Publications] 吉村作治 他: "「早稲田大学第6次アブ・シール南丘陵頂部発掘調査概報」"ヒューマンサイエンス. 13-2(印刷中). (2001)
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[Publications] 吉村作治,齋藤正憲: "「第9次アブ・シール南丘陵頂部遺跡発掘調査報告」"オリエント. 43-2(印刷中). (2001)
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[Publications] 柏木裕之: "「アブ・シール南・丘陵頂部の建築遺構」"オリエント. 43-2(印刷中). (2001)
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[Publications] 吉村作治 他: "「第9次アブ・シール南丘陵頂部遺跡発掘調査報告」"エジプト学研究. 9(印刷中). (2001)
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[Publications] 吉村作治 他: "エジプトを掘る-それをめぐる様々な学問分野-"第14回「大学と科学」公開シンポジウム組織委員会. 244 (2000)
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[Publications] 吉村作治 他: "アブ・シール南[I]"鶴山堂(印刷中). (2001)