2000 Fiscal Year Annual Research Report
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12374002
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Research Institution | National Research Institute for Cultural Properties, Tokyo |
Principal Investigator |
川野邊 渉 東京国立文化財研究所, 修復技術部, 室長 (00169749)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斎藤 英俊 東京国立文化財研究所, 国際文化財保存修復協力センター, センター長 (30271589)
早川 典子 東京国立文化財研究所, 修復技術部, 研究員 (20311160)
渡邊 明義 東京国立文化財研究所, 所長 (00249913)
石崎 武志 東京国立文化財研究所, 保存科学部, 室長 (80212877)
朽津 信明 東京国立文化財研究所, 国際文化財保存修復協力センター, 主任研究官 (50234456)
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Keywords | 中国壁画 / 寺観壁画 / 保存技術 / 保存環境 / 修復材料 / 修復技法 / 壁の劣化機構 / 壁の構造 |
Research Abstract |
美術史研究班は、北京・智化寺の壁画について、技法、構造、素材、主題の面から観察し、併せて地蔵十王図という主題の図像学的特徴およびその系譜について調査、考察した。また智化寺壁画の地域的、時代的特質を明らかにするために、北京近辺および山西省の寺観壁画を調査し、比較検討を行った。文献的研究としては、『元代画塑記』を素材として、元時代の壁画制作に使用する素材に関わる用語を採集し、分類するとともに、『元代画塑記』の読解を進めた。劣化機構研究班は、中国の壁画の保存環境、劣化機構を明らかにするために、本年度は、北京、智化寺の壁画部分の構造調査、周囲環境の調査を行うと共に、壁画周辺の温湿度変化を調べるために、計測器の設置を行った。また、関連調査として、山西省、永楽宮、青龍寺等の寺観壁画部分の構造調査を行った。 修復技術研究班は、中国における壁画の修復技術および技法の研究のために、北京・智化寺の壁画と北京近辺の寺観壁画を調査し、壁画に残されている修復の痕跡やその影響について調査を行った。また、それぞれの壁画について修復の記録についても聞き取り調査を行い、文物研究所では、修復技法・材料に関する研究交流のための準備を行った。 建造物班は、智化寺と法海寺に関する調査を行った。智化寺に関しては、立地条件から来る湿気や排水の問題は認められなかった。なお、頭貫、梁、斗きょうなどには建立当初と思われる建築彩色が残存している。法海寺については、壁画の保存状況は全体に良好であるが、東・西壁の北寄りと北壁および来迎壁の裏面に劣化現象が認められる。このことは、来迎壁と北壁に挟まれた空間が狭く、空気の滞留が起こりやすいことに加え、大雄宝殿の基壇上面から約2m高い旧薬師殿の壇に接するように大雄宝殿が建てられているために、上の壇からの雨水や湿度の影響があると考えられる。大壁造りとして柱を塗り込めている部分では、柱位置に縦に走る亀裂が壁画の画面上に認められる。これは地震や強風などの振動に起因するものと思われるので、壁画の保存対策としては、何らかの構造的な措置を必要とする。
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