2000 Fiscal Year Annual Research Report
英米文学研究における中世・ルネッサンスのイコノロジーの影響と役割
Project/Area Number |
12410120
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
藤田 實 関西大学, 文学部, 教授 (40029658)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石坂 恒 関西大学, 文学部, 教授 (50141940)
入子 文子 関西大学, 文学部, 教授 (80151695)
物部 晃二 関西大学, 文学部, 教授 (80067652)
山田 由美子 神戸女学院大学, 文学部, 教授 (50200754)
今西 雅章 関西外国語大学, 外国語学部, 教授 (90084029)
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Keywords | イコノロジー / 視ること / 眼 / イコーニック / 再構築 / 表象 / ロマンス・ロマンス劇 / 解体 |
Research Abstract |
英米文学における中世・ルネッサンスのイコノロジーの影響と役割を英米の詩・劇・小説というジャンルで、追求する過程で、本研究のもっとも主要な軸を形成しつつあると判断されるものは、從来の図像解釈学(イコノロジー)をこえて、形象解釈学的(イコーニック)な観照・考察によって、文学の本貭を記述し、解釈を試みることが、次第に適切であり、有効であることが、判明してきたことである。そこには、イコノグラフィー的な同定作業という固定した静的な考察をこえて、画像ないし.文学的イメージの形象が、より象徴化され、動的にゆらぎをもち.語り手ないし.作者の主体の不安定な状態、ないしは、動的な想像力の発展と関連して映じると意識されているのである。石坂教授はチョーサーの作品において「目に映るもの」とその「実体」との隔りやズレが作品全体に常に意識されること、知覚がとらえたものに対する疑念の発生の可能性そのものが、チョーサーの作品モティフを形成していることを報告している。今西教授はシェイクスピアの後期ロマンス劇の寓意が、staticな性貭のものから、dynamicな性貭のものに移行し、そこに寓意から象徴へと、シュイクスピアの演劇的・詩的手法の転換がおこりつつあることを報告している。入子教授は、ホーソンの文学において、一見して外面的に堅固に安定した表象の紋章、墓・服飾などの目にみえる記号が、作品の(とくにロマンスという形式の)内部で解体し、作家の精神や想像力の中で、再構築されること、現実の表象と想像力での表象のはざまの中間領域こそ、文学・芸術と現象のかかわり方での真実を表現する場であることが確認されつつある。
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Research Products
(9 results)
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[Publications] 石坂恒: "チョーサーの『名声の館』における残像"英文学論集(関西大学英文学会). 40. 135-144 (2000)
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[Publications] 吉中孝志: "アダムの肋骨とアーヴェルの庭(前編)"広島大学文学部紀要. 第60巻. 163-184 (2000)
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[Publications] 山田由美子: "Reproducing Living Organisms : Ben Jonson's Dramaturgy Procreation"Connotations (Waxmann : Munster/NewYork). 8・3. 294-303 (2000)
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[Publications] 山田由美子: "ミハイル・ベフチンの盲点"Shakespeare News(日本シェイクスピア協会). 40・2. 35-38 (2000)
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[Publications] 山田由美子: "文学と建築-ベン・ジョンソンのウィトルウィウス解釈をめぐって"神戸女学院論集(神戸女学院大学研究所). 48・2. 1-17 (2000)
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[Publications] 藤田實: "新プラトン主義とシェイクスピアの『あらし』"シェイクスピアを学ぶ人のために. 347-358 (2000)
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[Publications] 今西雅章: "公爵はなぜ裁きを引き延したのか-『尺には尺を』におけるアニエリスム"今西雅章 他 編『シェイクスピアを学ぶ人のために』(世界思想社). 325-339 (2000)
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[Publications] 入子文子: "Peter Parley's Universal History とホーソーンのアメリカ観-初版の扉絵を読む"関西大学文学論集. 50巻1号. 111-124 (2000)
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[Publications] 今西雅章 他(編): "シェイクスピアを学ぶ人のために"世界思想社. 372 (2000)