2000 Fiscal Year Annual Research Report
イタリアにおける≪庶民≫の発見とその≪国民≫への変容過程の研究
Project/Area Number |
12410124
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
齋藤 泰弘 京都大学, 文学研究科, 教授 (70115848)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桐生 尚武 明治大学, 経済学部, 教授 (80205046)
天野 恵 京都大学, 文学研究科, 助教授 (90175927)
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Keywords | イタリア / 国民 / 演劇 / ヴェネツィア / ゴルドーニ / リソルジメント / マンゾーニ / 文学 |
Research Abstract |
研究代表者である斎藤泰弘は、18世紀イタリア演劇において、古典主義的なそれまでの演劇の主人公たちとは異なる「庶民」の姿が大きく取り上げられていく過程を、個々の作品に即して具体的に跡付ける作業を進めた。その第一段階として、まずゴルドーニの別荘3部作が上演された1761年秋のヴェネツィア共和国の社会状況を踏まえた上で、わがままで勝気な上流市民の娘と伝統を重んじる長老、その両者の間で右往左往する優柔不断な父親といった役柄の設定が、当時進行しつつあった政治変動に関して観衆の心に喚起せしめたであろうイメージを検証し、その成果を平成12年10月28日に京都大学で開催されたイタリア学会第48回大会において発表した。 研究分担者のひとり天野恵は、マンゾーニの初期作品において「イタリア国民」の概念が形をとり始めていた様子を探求した。史劇『アデルキ』の初版(1822)と、これに先立つ手稿、それに初版の出版を念頭において執筆された論考『イタリアにおけるロンゴバルド史の問題点』第一版を比較検討しながら、論考に見られるマンゾーニの「イタリア国民」概念に着目し、教皇庁の対フランク政策やロンゴバルド支配下の被圧迫民である「ラテン人」のコロスなどの扱いがどのように変化していったのかを、1820-21年のイタリアの政治状況とも絡めて分析する一方、本務校の夏季休暇を利用してイタリアの主要図書館に赴き資料調査を行なった。 なお、いまひとりの研究分担者であった桐生尚武は、ファシズムのルーツを求めてリソルジメント期以前のイタリア農村社会に関する研究に意欲を燃やしていたが、平成12年11月、癌のために急逝した。
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