東アジア法文化の現況と未来-「アジア的価値」と近代西欧法の対立に即して-

2000 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 12420001
• Research Institution: Hokkaido University
• Principal Investigator: 今井 弘道 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (00093188)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 安田 信之 名古屋大学, 大学院・国際開発研究科, 教授 (00242884) ; 鈴木 賢 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (80226505) ; 鈴木 敬夫 札幌学院大学, 法学部, 教授 (50047908) ; 岡 克彦 長崎県立大学, 経済学部, 助教授 (90281774) ; 中村 睦男 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (30000665)
• Keywords: 「人治」から「法治」へ / 官僚主導型法体制 / 経済開発体制 / 東アジア的近代 / 「近代」の克服 / 21世紀東アジア法哲学 / 法文化の多様性 / 東アジア法

Research Abstract

各研究分担者がテーマに即して資料、情報の収集、整理を行ったほか、3度にわたる大規模な国際会議に参加ないし主催し、研究成果の中間報告を行うとともに、以下のような知見を得た。10月には中国南京で開かれた(1)中国IVR主催の第三回東アジア法哲学シンポジウム、(2)日中韓・東アジア経済法研究会に出席した。(1)では、中国・韓国の法哲学者たちとの議論の中で、「人治」から「法治」への転換という中国の現代的法課題が、明治以降の日本の官僚主導型法体制の転換、朴正煕軍事独裁体制下の経済開発体制からの脱却という韓国の法課題と無関係ではなく、ある種の内在的関連と共通性をもつことが確認された。このような三国が現実に当面している実践的な法課題の解明を通して、アジアにおける近代法の形成・発展とその現況、課題を深める中で、東アジア的近代の問題性が統一的に把握されるべきことが課題として浮上した。研究代表者の今井が、基調報告「主権的国民国家と産業社会の「近代」の克服をめざして」を行ったが、その報告内容と上記の問題とが統合されて、21世紀の東アジアの法哲学の共通の問題意識が具体化される可能性が明確にされた。また、(2)への参加によって、この問題が経済法という具体的法領域で検討されていることを確認することができた。(3)3月6日・7日、北海道大学において国際ワークショップ「東アジアにおける法学の21世紀的課題」を主催した。中国、台湾、韓国から15名の学者を招いて、研究分担者の中からは今井弘道、鈴木賢が成果を報告し、討論がなされた。
上記の問題意識が更に深化、共有されるとともに、新たな東アジア法研究の基礎が固められたと評価してよいであろう。

Research Products

• [Publications] 今井弘道: "「市民社会と社会主義」から「市民社会主義」へ-平田清明『市民社会と社会主義』の現代的意義-"状況出版編集部(編)『国家を読む』(情況出版). 276-297 (2000)
• [Publications] 今井弘道,阿部信行: ""Zivilgesellschaft"の社会哲学・法哲学"今井弘道(編著)『新・市民社会論』(風行社). 7-46 (2001)
• [Publications] 今井弘道: "「市民社会」と現代法哲学・社会哲学の課題"今井弘道(編著)『新・市民社会論』(風行社). 355-393 (2001)
• [Publications] 今井弘道: "主権的国民国家と産業社会の「近代」の克服をめざして-21世紀アジア法哲学の課題と展望-"北大法学論集. 51巻6号(発表予定). (2001)
• [Publications] 鈴木敬夫: "価値寛容主義の仁学的展開-杜鋼建の人権思想"三島淑臣,稲垣良典,初宿正典(編)『人間の尊厳と現代法理論(ホセ・ヨンパルト教授古稀祝賀)』(成文堂). 357-376 (2000)
• [Publications] 鈴木敬夫: "(翻訳)朴榮吉著「株主代表訴訟-韓国における株主代表訴訟論の一側面」"札幌学院法学. 17巻1号. 117-156 (2000)
• [Publications] 鈴木敬夫: "(編訳)中国・韓国における法人の刑事責任論(4)-趙炳宣著「両罰規定と法人の刑事責任(1995・ソウル)」ほか2篇"札幌学院法学. 17巻1号. 157-233 (2000)
• [Publications] 鈴木敬夫: "法人の犯罪能力と刑事責任-韓国と中国における論点素描"『商事法の理念と実際(南杲朴榮吉教授華甲記念)』(韓国ソウル・東国大学校出版). 78-102 (2000)
• [Publications] 鈴木敬夫: "中国の憲政と人権-杜鋼建の新仁学人権論素描"札幌学院法学. 17巻2号. 1-58 (2001)
• [Publications] 鈴木敬夫: "(編訳)韓国の国家保安法廃止論考-任雄,梁建,金日秀教授の所説"札幌学院法学. 17巻2号. 125-203 (2001)
• [Publications] 岡克彦: "韓国開化思想の権利観-兪吉濬の『権利論』と素材として-"京畿法学論叢. 創刊号. 399-424 (2000)
• [Publications] 中村睦男: "「新しい人権」と憲法13条の幸福追求権"杉原泰雄先生古稀記念論文集刊行会(編)『21世紀の立憲主義』(勁草書房). 307-323 (2000)
• [Publications] 中村睦男: "生存権と社会保障制度"ジュリスト. 1192号. 127-131 (2001)
• [Publications] 國分典子: "韓国憲法における民主主義と立憲主義"憲法問題(全国憲法研究会編). 11号. 90-102 (2000)
• [Publications] 鈴木賢: "中国で近代法はなぜ拒絶されるか-無罪推定原則をめぐって"小川浩三(編)『北大法学部ライブラリー6:複数の近代』(北海道大学図書刊行会). 221-279 (2000)
• [Publications] 鈴木賢: "中華人民共和国建国五〇年-法の観点から"北大法学論集. 51巻4号. 226-238 (2000)
• [Publications] 鈴木賢: "現代台湾における法の本土化-「中華民国在台湾」法から台湾法への転換-"北大法学論集. 51巻4号. 269-279 (2000)
• [Publications] 鈴木賢: "(書評)変わらぬ中国法の『からくり』-高見澤磨著『現代中国の紛争と法』(東京大学出版会)1998-"社会体制と法. 創刊号. 109-114 (2000)
• [Publications] 鈴木賢: "中国における市場化による「司法」の析出-法院の実態、改革、構想の諸相-"小森田秋夫(編)『市場経済化の法社会学』(有信堂). 239-284 (2001)
• [Publications] 宇田川幸則: "(翻訳)郭道暉著「毛沢東ととう小平の国家統治戦略と法制観の比較研究」"北大法学論集. 52巻1号(発表予定). (2001)
• [Publications] 今井弘道: "「近代」の構造転換と新しい「市民社会」への展望-「市民自治思想の基礎」のために-(平成10年度地方自治土曜講座ブックレット:No.39)"北海道町村会. 58 (2000)
• [Publications] 今井弘道(編著): "新・市民社会論"風行社. 396 (2001)
• [Publications] 安田信之: "東南アジア法"日本評論社. 359 (2000)
• [Publications] 木間正道,鈴木賢,高見沢磨: "外国法入門双書:現代中国法入門(第2版)"有斐閣. 324 (2000)