2000 Fiscal Year Annual Research Report
事業者消費者間の電子商取引における民事法ルールのあり方
Project/Area Number |
12420012
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
安永 正昭 神戸大学, 大学院・法学研究科, 教授 (70025154)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 康博 小樽商科大学, 商学部, 教授 (20217087)
窪田 充見 神戸大学, 大学院・法学研究科, 教授 (60186450)
山田 誠一 神戸大学, 大学院・法学研究科, 教授 (60134433)
占部 洋之 大阪学院大学, 法学部, 助教授 (30288740)
鶴藤 倫道 関東学園大学, 法学部, 助教授 (70265346)
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Keywords | 電子商取引 / 事業者消費者間取引 |
Research Abstract |
事業者消費者間の電子商取引における民事法ルールのあり方については、近時の議論の動向を調査した結果、(1)契約の成立要件、(2)契約の有効要件、(3)無権限取引、(4)損失分担、(5)契約からの離脱、(6)約款の問題が重要な問題であることが分かり、これらの6項目についてルールおよび今後のルールのあり方についての議論状況を、検討した。 その結果、(1)契約の成立要件については、隔地者間契約に関する民法の規律の電子商取引への適合性の問題、最初の意思表示を消費者・事業者いずれが行なうとするかという問題、受領確認というメッセージ(観念の通知)の要否の問題があることが明らかにされた。(2)契約の有効要件については、消費者の操作上のミスについて、動作とその意味との対応関係について、事業者が一方的に、定義するという側面に注目して、錯誤の要件論の応用を行なうべきことが明らかにされた。(3)無権限取引については、一回的な取引と、基本契約を予め締結しそのうえで個別の取引を行なうものとの間に、法律構成においても、実際の解決においても、相違が生ずること、UNCITRALの電子商取引に関するモデル法と、国際振込に関するモデル法とを比較すると、後者の規律がより合理的であり、説得力が認められることが明らかにされた。(4)損失分担については、インターネット上での取引と、専用回線上の取引とは、同じ電子化された取引であっても、システムの安定性のうえで、相当程度異なり、したがって、インターネット上の事業者消費者間取引に関する損失分担の基本的な視点は、システム自体の不安定さを前提に、損失が生じた場合の他への転嫁の要否を考えるべきであることが明らかにされた。(5)契約からの離脱については、情報の不十分さ、取引の非現物性に着目し、既存のクーリングオフ制度を参考しつつ、検討を行なうことが有益であることが明らかにされた。(6)約款については、ネット上で消費者が容易にアクセスできるという状況の確保が重要であるが、同時に、事業者側の対応いかんにかかわらず、約款へのアクセスが事実上不可能な通信媒体(携帯電話)の登場で、根本的な再検討を要することが明らかにされた。
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