日韓経済法とその背景的文化の比較研究-アジア的競争原理の可能性の探求-

2000 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 12420014
• Research Institution: Hokkaido University
• Principal Investigator: 稗貫 俊文 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (70113610)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 向田 直範 北海学園大学, 法学部, 教授 (90104695) ; 今井 弘道 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (00093188) ; 厚谷 襄児 帝京大学, 法学部, 教授 (90222637) ; 中山 武憲 名古屋経済大学, 法学部, 教授 (40278388) ; 和田 健夫 小樽商科大学, 商学部, 教授 (20133796)
• Keywords: 独占禁止法 / 韓国公正取引法 / 中国経済法 / 東アジア経済法 / サイバースペース / 域外適用 / 競争法 / グローバルスタンダード

Research Abstract

各研究分担者が資料収集、調査を進めるとともに、中国と日本で2度の国際研究集会を開催し、討論を深めた。10月には中国・南京師範大学で、日本、中国、韓国から専門家が集まり、東アジア経済法研究会を開催し、主に各国の競争法制定に関する研究報告が行われた。得られた知見には以下のようなものがある。(1)日韓の競争法は、出発点において正常な政治的環境の下で制定されたものではないこと。向田直範教授(北海学園大学)の報告は、日本の独占禁止法(1947年)が、占領軍施政下の法制定で、政財界の反撥と無理解が続き、真の国内法として定着するのは1990年代からだとする。朴吉俊教授の(延世大学校)の報告は、韓国の公正去来法(1981年)が、朴軍事政権下の国民懐柔のための法制定であり、近年の通貨危機の克服過程で国内に定着をみたとしている。(2)中国における競争法制定をめぐる諸問題。盛傑民教授(北京大学)の報告では、中国ではまだ独占禁止法は制定されておらず、私案が学者などで議論されている段階にあることが確認された。中国競争法の制定の意義を、増大する外資の規制に求める学者と、地方政府の参入規制を廃止することに求める学者に分かれた。
2回目の研究会は、2001年3月に北海道大学で、法哲学研究者と合同で開催され、中国、台湾、韓国と日本の学者が集まった。研究全体を通じて、東アジア経済法学は欧米の先端的な経済法の研究を徹底して行なうことにより、グローバルスタンダードに対抗する途を見出すべきであることが確認された。具体的には、経済法に関して韓国から2本の報告があった。サイバースペースと情報規制の問題が、韓堅愚教授(延世大学校)から、また、競争法の域外適用について申鉉允教授(延世大学校)から報告がなされた。

Research Products

• [Publications] 稗貫俊文: "平成11年度審決・判例研究(下)"NBL. 693号. 21-28 (2000)
• [Publications] 今井弘道: "「市民社会と社会主義」から「市民社会主義」へ-平田清明『市民社会と社会主義』の現代的意義-"状況出版編集部(編)『国家を読む』(情況出版). 276-297 (2000)
• [Publications] 今井弘道,阿部信行: ""Zivilgesellschaft"の社会哲学・法哲学"今井弘道(編著)『新・市民社会論』(風行社). 7-46 (2001)
• [Publications] 今井弘道: "「市民社会」と現代法哲学・社会哲学の課題"今井弘道(編著)『新・市民社会論』(風行社). 355-393 (2001)
• [Publications] 今井弘道: "主権的国民国家と産業社会の「近代」の克服をめざして-21世紀アジア法哲学の課題と展望-"北大法学論集. 51巻6号(発表予定). (2001)
• [Publications] 向田直範: "環境保全と競争政策"日本経済学会年報:社会的規制と競争政策. 21号. 1-16 (2000)
• [Publications] 向田直範: "消費者利益の確保と競争政策"公正取引. 600号. 52-57 (2000)
• [Publications] 向田直範: "日本の独占禁止法の歴史-過去と現在"法学研究(北海学園大学). 36巻3号. 170-191 (2001)
• [Publications] 鈴木賢: "中国で近代法はなぜ拒絶されるか-無罪推定原則をめぐって"小川浩三(編)『北大法学部ライブラリー6:複数の近代』(北海道大学図書刊行会). 221-279 (2000)
• [Publications] 鈴木賢: "中華人民共和国建国五〇年-法の観点から"北大法学論集. 51巻4号. 226-238 (2000)
• [Publications] 鈴木賢: "現代台湾における法の本土化-「中華民国在台湾」法から台湾法への転換-"北大法学論集. 51巻4号. 269-279 (2000)
• [Publications] 鈴木賢: "(書評)変わらぬ中国法の『からくり』-高見澤磨著『現代中国の紛争と法』(東京大学出版会)1998-"社会体制と法. 創刊号. 109-114 (2000)
• [Publications] 鈴木賢: "中国における市場化による「司法」の析出-法院の実態、改革、構想の諸相-"小森田秋夫(編)『市場経済化の法社会学』(有信堂). 239-284 (2001)
• [Publications] 中山武憲: "韓国独占禁止法の改正について-財閥に対するより一層の規制強化を目的に-"公正取引. 594号. 56-57 (2000)
• [Publications] 中山武憲: "韓国独占禁止法の第8次改正"国際商事法務. Vol.28,No.4. 431-434 (2000)
• [Publications] 中山武憲: "韓国独占禁止法第8次改正とその内容"名経法学. 9号. 1-80 (2001)
• [Publications] 中山武憲: "(翻訳)韓国約款規制法及び同法施行令"名経法学. 9号. 101-122 (2001)
• [Publications] 中山武憲: "日韓両国独占禁止法の比較法的検討"北大法学論集. 51巻6号(発表予定). (2001)
• [Publications] 中山武憲: "韓国独占禁止法2000年改正とその内容-第8次改正法施行体制の確立に向けて-"名経法学. 10号(発表予定). (2001)
• [Publications] 岡克彦: "韓国開化思想の権利観-兪吉濬の『権利論』を素材として-"京畿法学論叢. 創刊号. 399-424 (2000)
• [Publications] 岸井大太郎,向田直範,和田健夫,内田耕作,稗貫俊文: "経済法:独占禁止法と競争政策 第3版補訂"有斐閣. 377 (2001)
• [Publications] 今井弘道: "「近代」の構造転換と新しい「市民社会」への展望-「市民自治思想の基礎」のために-(平成10年度地方自治土曜講座ブックレット:No.39)"北海道町村会. 58 (2000)
• [Publications] 今井弘道(編著): "新・市民社会論"風行社. 396 (2001)
• [Publications] 木間正道・鈴木賢・高見沢磨: "外国法入門双書:現代中国法入門(第2版)"有斐閣. 324 (2000)