2001 Fiscal Year Annual Research Report
最先端技術における日本の研究体制と企業組織の流動化:継続性と革新の融合を求めて
Project/Area Number |
12430011
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
METHE David.T. 上智大学, 比較文化学部, 助教授 (50294244)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅川 和宏 慶応義塾大学, 大学院・経営管理研究科, 助教授 (50276424)
村山 裕三 大阪外国語大学, 外国語学部, 教授 (20239552)
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Keywords | 研究体制 / 技術革新 / ストラテジー / 流動化 / 継続性 / 半導体産業 / マルチメディア産業 / バイオ産業 |
Research Abstract |
日本のハイテク産業は、90年代において欧米に比べ劣勢になった。なぜなのか。技術体制そのものが原因なのか。だとすれば、研究所や企業は如何に対処しているのか。Northの体制理論をもとに技術体制と組織戦略における継続と流動化に注目した。昨年に続き文献調査を行い、カバーできなかった残りの面接調査(昨年の実施数100組織)を半導体(Metheが国内企業32、国内技術支援機関14、韓国企業10、韓国技術支援機関7、計63)、バイオ(浅川が日本6)、マルチメディア(村山が日本2)において実施した。 本年は特に文献やインタビューの分析に重点を置いた。その結果、日本の国際競争力を確保するための研究開発体制に特定の新しい動きがあることが判明した。クローズド・システムからオープン・システムへ、国内研究活動中心型から国外リソースの活用型へ、縦の組織内や組織間関係から横の関係へ、知識の組織内在型から組織外利用型、リスクの組織内対応型から外部リスク・ヘッジ型へ、基礎知識の国外依存型から国内開発型へ、組織間協力の単層型から多層型へ、ビジネスモデル固定型から変革型へと変わってきており、国のマクロと組織のミクロの両レベルにおいて起こっている。このような動きは、台湾企業の速い変革を除き米国や韓国企業も同じような変革を実現しようとして苦戦している。 日本の場合、これらの動きはまだ始まったばかりであり、伝統的な日本のシステムと相対立する性格を持ち、伝統的な体制による阻害、古い体制と新しい体制との対立、マクロとミクロレベルのミスマッチ等が起こっている。ハーモナイズされたガヴァナンスの構造には程遠い状態であり、相互作用は起こっていない。しかし、新しい体制と古い概念が融合し、新しい体制の正当化や実情への適応も起こっている。例えば、情報通信分野では、iモードやプレイステーションはオープンシステムと「場」の概念が融合した結果生まれたと理解できる。半導体産業では組織間の横の関係に伝統的な協力関係を導入し、産学のような今まで協力関係が弱かった領域においても、競争的手法を使いながらも協力関係を強化するという日本の伝統的な競争と協力の概念が適応されている。すなわち、新しい体制と古い体制が融合し、より実情に即した新しい体制が生まれようとしている。昨年の各産業弱体化の分析に続き、今年は新体制の構築の動きに注視し、分析を続けている。
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