2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12440110
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
香取 秀俊 東京大学, 工学部・附属総合試験所, 助教授 (30233836)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安田 正美 東京大学, 工学部・附属総合試験所, 助手 (50322045)
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Keywords | レーザー冷却・トラッピング / 半導体レーザー / 第2次高調波発生 / 準安定状態 / 光ポンピング |
Research Abstract |
(1)冷却光源の開発: (a)1mKまでの予備冷却に必要な波長461nmレーザー:単一モード半導体レーザー(波長921nm)をLittrow型外部共振器構造にて使用し、線幅1MHz、出力10mWの光を得た。この光をTapered Amplifierに入射させ、400mWまで光強度を増大させた後、光増強共振器中でKNbO_3による第2次高調波発生により100mWの出力の461nmレーザー光を得た。(b)^3P_2準安定状態を下準位とする冷却に必要な波長496nmレーザー:基本的な構成は(a)と同一であるが、光増幅器にBroad Area Amplifierを使用し、30mWの496nmレーザー出力を得た。 (2)実験用真空系の整備: (1)Sr原子蒸気生成用オーブン、(2)原子線収束部、(3)原子線減速部、(4)原子トラップ部の4つから成る真空系を組み上げた。レーザー光の真空槽内導入や、観察のために用いられる覗き窓(viewport)として、Nobleらによって提案された加工ガスケットを使用する方式を採用した。この方式は、窓としての開口部の光学的平滑度が保証されることや、透過させる光の波長に応じて自由に窓材を交換できること、等の利点がある。 (3)原子冷却・トラップ実験: 上記(1),(2)で準備された装置により、461nm光によるSr原子の磁気光学トラップ(MOT)を得た。更に、このMOT中の原子に496nm光を照射することにより、トラップ原子数の増大が確認された。これは、以下の様に説明される。 トラップ中の原子は、予備冷却遷移(5s^2^1S_0⇔5s5p ^1P_1)の上準位5s5p^1P_1から10万サイクルに1回の割合で、中間状態5s4d^1D_2を経て3重項準安定状態5s5p^3P_2に緩和する。この準安定状態を下準位とする、496nm光による冷却遷移(5s5p ^3P_2⇔5s5d ^3D_3)は完全に閉じたものではなく、その上準位から、一部が5s6p ^3P_2に緩和する。この原子は最終的に、5s6p^3P_<1,2,3>状態に、各々3%,33%,64%の割合で緩和する。このうち、^3P_1状態の原子は基底状態^1S_0に緩和するので、この分がトラップ中の原子数の増大に寄与する。 準安定状態^3P_2に緩和したものは再び496nm光による冷却遷移サイクルに復帰する。スピンを持たない準安定状態^3P_0に緩和した原子は、461nm,496nm両方の光とも、また、磁場とも相互作用しないのでトラップから解放され、自由落下を始める。この過程は連続的に生起するので、極低温スカラー原子波を連続的に生成することができることとなる。
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