2002 Fiscal Year Annual Research Report
内殻励起分子に特有な分子構造変化を伴う緩和過程の研究
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12440115
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
繁政 英治 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助教授 (90226118)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小杉 信博 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 教授 (20153546)
下條 竜夫 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助手 (20290900)
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Keywords | 内殻励起 / シンクロトロン放射光 / オージェ崩壊 / 分子解離 / 分子振動 / 偏光依存 / ベクトル相関 / 反応動力学 |
Research Abstract |
本研究は、内殻励起分子の研究における電子的脱励起過程と解離ダイナミクスをより深く理解するために、入射光の偏光ベクトルに対する電子やイオン放出方向の測定や、さらに高度な電子とイオンのベクトル相関の測定装置の開発研究である。具体的には、(1)高速応答性の二次元位置検出器を用いた高効率の静電型電子エネルギー分析器の製作し、(2)二次元画像検出器を内蔵したイオン質量分析器を組み合わせたベクトル相関測定、を実現する事が最終目標である。これにより、簡単な分子の内殻励起ダイナミクスを多角的、立体的に捉える事が可能となると期待される。 今年度は、高速応答性の二次元位置検出器が利用可能な高効率の静電型電子エネルギー分析器の性能評価、及び同時計測の実用化に向けた間題点の洗い出しに重点を置き、総合的な整備を実施した。真空チャンバー内の地磁気の影響は、前年度準備したミューメタルの二重シールドを採用することで十分に低減されていると判断されたが、テスト実験の結果、現有のガウスメータの精度不足から磁化した材料を見落としている事が明らかになり、急遽新型の高精度ガウスメータの導入を決定した。このガウスメータを利用して、地磁気の影響、ガスノズルやエネルギー分析器の組立に用いたネジ等の部品の磁気を詳細にチェックし、それらを取り除くことにより、静電型電子エネルギー分析器が正常に動作する事が漸く確認された。UVSOR施設のBL4Bにこの実験装置を取り付け、放射光を用いて希ガス原子からのオージェ電子スペクトルを観測し、レンズ条件の最適化、ディフレクターの効果の確認並びに最適化を行う事が出来た。ただし、現状では低エネルギー電子の検出効率が著しく低いので、その原因究明と対策を施し、上記課題の(2)を出来るだけ早期に実現できるよう開発を継続して行く所存である。
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[Publications] E.Shigemasa, T.Gejo, M.Nagasono, T.Hatsui, N.Kosugi: "Double and triple excitations near the K-shell ionization threshold of N2 revealed by symmetry-resolved spectroscopy"Physical Review A. 66. 22508-1-225058-4 (2002)