2002 Fiscal Year Annual Research Report
海岸線自動後退理論を基礎とする海底扇状地の実験シークウェンス層序学的研究
Project/Area Number |
12440139
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
武藤 鉄司 長崎大学, 環境科学部, 助教授 (70212248)
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Keywords | シークウェンス層序学 / 河川デルタ / 段丘 / 海水準変動 / 海底扇状地 / 海岸線自動後退理論 / 水槽実験 / 自己組織的 |
Research Abstract |
実験シークウェンス層序学の手法によって、深海底扇状地の発達条件と海岸線自動後退との関係が明らかになった。また、この問題の検討過程でシークウェンス層序学と海岸線自動後退理論の理解に関わる重要な発見があった。以下、これらの新知見を述べる。 1.海岸線自動後退理論は海水準下降期のデルタ堆積系にも適用可能である。海水準下降速度一定、堆積物供給速度一定の条件のもとで、デルタ堆積系は埋積的にふるまう初期段階を必ず経験しそしてそののちに侵食的レジメを必然的に迎える(autoincision)。定常的海水準上昇のもとでのオートブレイクも、定常的海水準低下のもとでのオートインシジョンも、同一の方程式で表現できる。オートブレイクとオートインシジョンはいずれもデルタの初期ジオメトリが失われる変換点であり、そしてその後は自己組織的海岸段丘と自己組織的河岸段丘がそれぞれ形成されていく。定常的外力のもとであっても、それに応答するデルタの自己組織的プロセスは非定常的に映りうる。 2.海底扇状地はその陸側での海岸線自動後退の現象に敏感に呼応する。海水準上昇期の早期にオートブレイクを経験するデルタと連携する深海粗粒堆積系では、海水準下降期もしくは低海水準期のみにおいて発達可能である。一方、オートインシジョン経験後のデルタには規模の大きなチャネルが存在するため、これを通じて粗粒堆積粒子は側方に拡散することなく陸棚をバイパスし海側遠方まで運搬されやすい。 3.自己組織的な地形発達過程と堆積過程の理解に根差した新しい地層観の構築が必要であり、それはオート層序学的地層観とでも呼ぶべきものである。海岸線自動後退理論はオート層序学の基礎となる。オート層序学はシークウェンス層序学のノルムであり、その開拓なくしてシークウェンス層序学の発展はありえない。地層解釈の基本は自己組織的プロセスに着目することである。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Tetsuji Muto: "Evolution of fluvio-marine deltaic systems under the control of relative sea-level rise : an experimental study"The 7th Joint Symposium Between Nagasaki University and Cheju National University on Science and Technology. 281-286 (2002)
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[Publications] Tetsuji Muto: "In defense of shelf-edge delta development during falling and lowstand of relative sea level"Journal of Geology. 110. 421-436 (2002)
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[Publications] Tetsuji Muto: "Role of autoretreat and A/S changes in the understanding of deltaic shoreline trajectory : a semi-quantitative approach"Basin Research. 14. 303-318 (2002)
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[Publications] Tetsuji Muto: "Autoincision and autogenic stream terraces in fluvio-deltaic systems with the steady fall of relative sea level : implications from flume experiments"2002 Geological Society of America Annual Meeting, Abstracts with Programs. 482-482 (2002)