2000 Fiscal Year Annual Research Report
希ガス同位体比、Ar-Ar年代測定に基づく地殻・マントルでの物質循環・進化の研究
Project/Area Number |
12440145
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
兼岡 一郎 東京大学, 地震研究所, 教授 (30011745)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 弥生 東京大学, 地震研究所, 助手 (90282730)
瀧上 豊 関東学園大学, 法学部, 助教授 (40206909)
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Keywords | 希ガス同位体比 / 地殻 / マントル捕獲岩 / 物質循環 / シベリア大陸 / 流体包有物 / 10Be / 海洋堆積物 |
Research Abstract |
シベリア大陸東縁部では、10Ma-40Ma頃に噴出したアルカリ岩中にマントル物質としての超塩基性捕獲岩が見いだされ、それらには顕微鏡観察により流体包有物が含まれている。それらからカンラン石を分離し、破砕法により希ガスを抽出してその同位体比を測定した結果、その3He/4Heが大気の値よりが低いものが見いだされた。その存在には地域性がある。大陸下マントルを構成している物質中の包有物から抽出された希ガスで大気より低い3He/4He比を示したことはこれまでに報告例がなく、大陸縁辺部の特性である可能性がある。さらに段階加熱による脱ガスでは、カンラン石の溶融成分には中央海嶺玄武岩と同様の値を示す傾向があり、低い3He/4He比を示す成分はカンラン石中に見られる流体包有物に、マントル上部でとりこまれた可能性が大きい。また40Ar/36Ar比は1例を除いて1000以下であり、水などを通じての大気的成分の寄与を示唆する。ラマン分光分析を利用して推定した炭酸ガス包有物の圧力は、マントル最上部の値と調和的である。これらの結果から、シベリア大陸縁辺下のマントルでは、沈み込んだスラブに起因する循環物質が数億年オーダーの長期間、周囲のマントル物質と均質化しないままでいる可能性が示唆された。 また東北日本や南北海道の第四紀火山の火山岩中の10Be/9Be比は、ハワイ・ロイヒ火山や第三紀火山の火山岩のものよりも高い値を示すことが明らかにされた。このことは、大気中でつくられた宇宙線照射生成核種としての10Be(半減期:150万年)は海洋堆積物中に濃集するが、スラブとともに沈み込んだ海洋堆積物が、島弧マグマ生成に関係していることを示す最も直接的な証拠となる。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Kaneoka,I.: "Earth's history trapped in the mantle"Science. 288. 988-989 (2000)
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[Publications] 島岡晶子,兼岡一郎: "Be同位体比から見た島弧マグマへの海洋性堆積物の寄与-北海道・東北日本弧火山を例として-"地学雑誌. 109(4). 627-635 (2000)
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[Publications] Iwata,N.and Kaneoka,I.: "On the relationships between the 40Ar-39Ar dating results and the cnditions of basaltic samples"Geochem.J.. 34. 271-281 (2000)
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[Publications] Naka,J.,..,Kaneoka,I. et al.: "Tectono-magmatic processes investigated at deep-water flanks of Hawaiian volcanoes"EOS. 81(20). 221-227 (2000)
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[Publications] Kaneoka,I.,Takahashi,N.and Arai,S.: "40Ar-39Ar analysis of phlogopite in the Horoman pridotite complex, Hokkaido, Japan and implications for its orijin"The Island Arc. 10. 22-32 (2000)