2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12440146
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤井 敏嗣 東京大学, 地震研究所, 教授 (00092320)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安田 敦 東京大学, 地震研究所, 助教授 (70222354)
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Keywords | 玄武岩マグマ / 揮発性成分 / 脱ガス / ガラス包有物 / 高圧実験 / 内熱式高圧装置 |
Research Abstract |
本年度は内熱式高圧装置を用いた含水条件での玄武岩の融解実験に主力を注いだ。伊豆大島玄武岩のうち,比較的未分化な組成で,無斑晶質なものと斜長石斑晶に富むものを選び,2.5kbの圧力下で無水〜水飽和(約6重量%の水を含む)条件での融解実験を行った。斑晶質の岩石では無水条件から飽和に至るまで,斜長石が第1晶出鉱物であるのに対し,無斑晶質の岩石では,斜長石と輝石がほぼ同時に晶出する。融解実験の結果を,熱力学プログラム,MELTSを用いて計算した相図と比較したところ,いずれの系でも斜長石の晶出温度とマグマ中の水の量との関係では,実験と計算との間に大きな差があることが判明した。MELTSプログラムは無水条件下での融解関係を忠実に再現することができるが,水を含む系では必ずしも実験結果と整合的でないことを示している。 得られた実験生成物のEPMA分析から,斜長石とメルト間の元素分配に対するマグマ中の水分量の影響を検討した結果,斜長石のCa/Ca+Na比とマグマ中の水分量が比例関係にあり,斜長石の組成からマグマ中の水分量を推定可能であることが分かった。しかし,比較的低温での溶融実験に基づいて定式化され,広範囲の斜長石組成に対して使用されてきた,これまでの斜長石水分計とは定量的には整合的ではない。このことも,含水系でのメルトの熱力学的パラメータに関しての再検討が必要なことを示している。本研究では実験生成物の水分量を赤外分光計により測定しているので,水分の測定精度は高く,今後の熱力学的検討に有用である。現在,この実験の結果を利用して,天然の玄武岩の斜長石組成から,マグマだまりでの水分量の推定を行いつつあり,この結果と斑晶中のガラス包有物中の水分量測定結果との比較から,マグマの脱ガス過程を議論する予定である。
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