Research Abstract |
1.始原的隕石母天体における水・熱・衝撃による変化の証拠 DIは主にCV3炭素質コンドライト隕石(以下CV3隕石)に多く含まれる岩片であり,これまで長い間,原始星雲の粒子が集積してできた物質と考えられてきた。 我々は,モコイア隕石から合計24個のDIを見い出した。いずれのDIも構成物・組織ともに母岩隕石に似ており,水質変成作用を受けたことは明らかである。しかし,DIの層状ケイ酸塩は,母岩と異なり,熱により,部分的に脱水した痕跡を示す。それに加え,DIのマトリックスから,20-30GPaの衝撃圧縮に特有の特徴が見つかった。 これらの結果は,以前から我々が提唱しているDIの母天体変成起源説を強く支持するものである。モコイア母天体では,広範な水質変成が起こった後,局所的に,衝撃による圧縮と加熱が起こったと思われる。 2.CO隕石の暗色包有物:母天体プロセスを示す新たな証拠 CO隕石は化学的にCV隕石と似ているが,このタイプの隕石からはDIは報告されていなかった。我々は,4つのCO隕石を電子顕微鏡で調べた結果,101個のDIを発見した。それらは,CO隕石母岩と似た物質が水質変成を起し,その後脱水作用があった証拠を示すことから,CV隕石のDIと似た履歴を持つと考えられる。 CO隕石のDIは,おそらくCO母天体において,母岩とは異なる場所で水質変成,熱変成を受けた岩石のかけらであろう。CO母天体は,これまで,水を含まず,均質で,熱や衝撃による物理的変化の無い天体と考えられていた。しかし,今回のDIの研究から,CO母天体は水を含む部分と含まない部分からなる不均質な天体であり,水のある部分では,加熱により水質変成および脱水変成が起こったことが示唆される。天体上での岩石の破砕,移動も活発に起こったと思われる。
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