2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12440152
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 裕子 (永原 裕子) 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (80172550)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小澤 一仁 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (90160853)
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Keywords | 蒸発 / 凝縮 / フォルステライト / 真空実験 / クヌッセンセル / 太陽系星雲 / 元素分別 |
Research Abstract |
宇宙や太陽系における化学進化は、固相と気相の間の相変化とそれにともなう元素分配、それが非平衡に進行する場合の非平衡元素分配、同位体分別、という化学過程と、固相と気相のサイズによる分別すなわち物理過程の2つのタイムスケールにより決する。本研究においては、非平衡過程における凝縮速度を決定するため、ソースとなるガスと凝縮物の温度を独立にコントロールし、またガスフラックスを測定可能な装置の開発をめざしてきた。平成12年度にはシステム構成を決定し、ガスソースとしてクヌッセンセルを用いることを決定し、年度末にクヌッセンセルを購入した。本年度は主に、昨年度購入したガスソースを用い、フラックスのコントロール、フラックス測定を適切におこなうことをおこなった。その結果、多成分系のガスからのフラックスのコントロール、測定、多成分ガスの混合比のコントルールがきわめて困難であることが判明した。その原因は、クヌッセンセルを用いることで、元素分別がおこり、単純な酸化物であっても、金属元素と酸素の、より複雑な化合物の場合は、構成元素の間の分別がおこるためである。また、任意の混合比を得ようとして温度を変化させると、その分別程度が変化する。このため、現在、ガスソースのコントロールを、金属元素は金属として、酸素は酸素として装置内に導入する方法を検討している。 一方、凝縮速度を支配する、カイネティックパラメターである凝縮係数を決定するため、既存装置を用いて、ガス圧の存在する条件でのフォルステライトの蒸発実験をおこない、圧力の関数としても蒸発係数の決定をおこなった、その結果、蒸発係数は圧力にほとんど依存性をもたず、真空蒸発係数を決定することで、比較的広範囲に適用可能であることが判明した。しかし温度に対する依存性に関しては、実験技術上の問題があり、まだ決定的にすることができていない。現在、引き続き実験を継続中である。 さらに、これらの過程をモンテカルロ法をもちいてシュミレーションし、蒸発における不飽和度、凝縮における過飽和度の関数としても凝縮・蒸発速度を決定した。この結果は、上記実験結果と基本的に調和的であるが、一部不調和であり、その原因は多成分系においては単純な結合エネルギーのみでこれらの過程を議論できないためと考えられる。 以上の結果、来年度にむけての問題点が明瞭になったため、その対応を検討中である。
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[Publications] K.Ozawa, H.Nagahara: "Chemical and isotopic fractionations by evaporation and their cosmochemical implications"Geochim. Cosmochim. Acta. 65. 2171-2199 (2001)
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[Publications] Nagahara, H., Ozawa, K: "The timescale of accretion and core formation of the Earth inferred from Hf-W isotope systematics"Proc. Japan National Academy. 77B. 167-171 (2001)
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[Publications] Tachibana, S., Tsuchiyama, A., Nagahara, H.: "Incongruent evaporation kinetics of enstatite (MgSiO3) - 1. Evaporation experiments"Geochim. Cosmochim. Acta. 66(In press). (2002)
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[Publications] Young, E.D., Galy, A., Nagahara, H: "Different mass-dependent isotope fractionation laws in nature and their geochemical and cosmochemical significance"Geochim. Cosmochim. Acta. 66(In press). (2002)