2002 Fiscal Year Annual Research Report
バイオマーカーと同位体を用いた始生代における生物多様性と地球表層環境変動の関係
Project/Area Number |
12440154
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Research Institution | TOKYO METROPOLITAN UNIVERSITY |
Principal Investigator |
奈良岡 浩 東京都立大学, 理学研究科, 助教授 (20198386)
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Keywords | バイオマーカー / 始生代 / 生物多様性 / 地球表層環境 / 炭素同位体比 / 窒素同位体比 / イオウ同位体比 / モリブデン |
Research Abstract |
地球史において表層環境進化における生物活動の役割は非常に大きいという認識はあるが、生物活動の多様性(進化)と環境変化の時期およびその大きさの関係は解明されていない。特に約25億年前までの地球環境は大気中は無酸素であり、今とは全く異なる環境であったと考えられている。本研究の目的はある種の生物に特有なバイオマーカーと呼ばれる有機分子・炭素同位体比を用いて始生代における生物活動の多様性(進化)と硫化物イオウ・全窒素の同位体比および無機化学元素(とくに酸化還元状態に敏感な元素)分布より生物の進化が地球表層における環境変化とどのように結びついているかを解明することである。 本最終年度は約27億年前に堆積したオーストラリア・ハマースレイ地域の黒色頁岩コア試料中のバイオマーカー分析を本研究費で設置した多段階ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて集中的に行った。その結果、約27億年前の黒色頁岩中に真核生物のバイオマーカーとされるステランが普遍的に存在することを見出した。このことは当時すでにその生合成過程で遊離酸素を必要とする生物が普遍的に存在していた可能性を示唆する。しかし、従来報告されていたシアノバクテリアのバイオマーカーであるメチルホパンなどは検出されなかった。従来、多段階質量分析に用いられてきた装置と今回用いた装置とのイオン化における違いの問題点も明らかになった。また、黒色頁岩中の有機炭素量とモリブデン量が正の相関を示し、酸化大気環境下での無機元素の溶脱・集積が起こっていたことも示唆した。本研究の今までの成果を第12回国際地球化学会議(ゴールドシュミット会議)および国内の学会で発表するとともに国際学術誌に論文を2編投稿した。また成果報告書を作成中である。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] T.Watanabe, H.Naraoka: "Glacial-interglacial changes in organic carbon, nitrogen and sulfur accumulation in Lake Baikal sediment over the past 250kyr"Geochemical Journal. 37(印刷中). (2003)
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[Publications] A.Sarkar, H.Yoshioka: "Geochemical and organic carbon isotope studies across the continental Permean-Triassicbo"Palaeogeogr. Palaeoclimat. Palaeoeol.. 191. 1-14 (2003)
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[Publications] K.E.Yamaguchi, H.Naraoka: "The early evolution of the Archean nitrogen biogeochemical cycle"Geochim. Cosmochim. Acta Spec. Suppl.. 66. A857 (2002)
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[Publications] T.Okuda, H.Kumata: "Origin of atmospheric polycyclic aromatic hydrocarbons (PAHs) in Chinese cities solved by compound-specific stable carbon isotopic analyses"Organic Geochemistry. 33. 1737-1745 (2002)
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[Publications] 奈良岡 浩: "「地球化学講座」第4巻「有機地球化学」第7章"培風館(印刷中). (2003)