2000 Fiscal Year Annual Research Report
ヒ素汚染地下水の形成に関わる堆積物中のヒ素の化学態と生物活動との関係
Project/Area Number |
12440155
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
中屋 晴恵 (益田 晴恵) 大阪市立大学, 理学部, 助教授 (70183944)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥平 敬元 大阪市立大学, 理学部, 講師 (20295679)
三田村 宗樹 大阪市立大学, 理学部, 助教授 (00183632)
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Keywords | ヒ素汚染地下水 / 堆積物 / 有機物態ヒ素 / バクテリア / 硫酸態イオウ |
Research Abstract |
本研究は,ヒ素が堆積物から地下水中へ溶出する過程でのヒ素の化学態変化に着目して研究を進めている.これまでに報告されているヒ素汚染の実例やヒ素の挙動に関する文献を収集整理し,総説として公表した.また,試料の収集と分析を行った.試料はすでに分析が進行していた大阪層群と対照試料とした西表島の堆積物について,形態別ヒ素の定量を完了した.その結果,堆積物中のヒ素は両地点で,硫化物態が最も多いが,酸化物に固定されているヒ素が還元的な化学態に変わる深度が西表島で地下約2.5m,大阪層群では,地下数10mにあり,その深度付近で有機物態ヒ素濃度に最大ピークが見られることを確認した.大阪層群の結果は,6月の地球惑星科学関連学会で発表した.西表島の結果は,来年度の同学会で発表準備中である.また,それぞれを論文化するためにデータ整理を行っている.また,箕面市で行っている湧水と周辺土壌中のヒ素と硫酸態イオウの季節的挙動変化の追跡から,硫酸還元バクテリアが周辺の酸化還元状態を規制することがあるために,ヒ素の挙動に影響を与えている可能性があることを明らかにした. 7月に大阪市内のボーリングコアを採取・保存した.また,ヒ素含有有機物の同定を行うために高速液体クロマトグラフと原子吸光光度計を接続し,現在,予備的分析を行っている.これまでのところ,ヒ酸・亜ヒ酸・モノメチルヒ素・ジメチルヒ素・トリメチルヒ素までに分離定量できることは確認した.ただし,定量限界がppmの濃度にあることから,ヒ素を微量にしか含まない試料からの溶液調整に技術が必要で,現在,調整法を検討中である.今後は,ヒ素含有有機物の変化を明らかにし,バクテリア活動がヒ素の溶出や固定にどのような役割を担っているかを検討する.
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[Publications] Masuda H.,Peacor D.R. and Dona H.: "TEM study of conversion of smectite to illite in mudstones of the Nankai Trough : Contrast with coeval bentonites"Clays and Clay Minerals. 49・2. (2001)
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[Publications] 柳澤文孝,賈疏源,益田晴恵 他4名: "日本・中国・韓国で採取したエアロゾルの化学組成(序報)"エコテクノロジー研究. 6. 25-30 (2000)
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[Publications] 益田晴恵: "地殻表層付近のヒ素の挙動と地下水汚染拡大機構"日本地下水学会誌. 42. 215-313 (2000)
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[Publications] 益田晴恵: "これからの海洋化学"地球化学. 34. 149-151 (2000)
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[Publications] 益田晴恵,中屋真司、賈疏源 他5名: "名水を訪ねて(50)中国四川省峨眉山の名水"日本地下水学会誌. 42. 263-271 (2000)
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[Publications] 満澤巨彦,益田晴恵,島伸和 他5名: "中部及び南部マリアナ熱水活動域「よこすか」深海曳航調査速報(YK99-11-Leq2)"JAMASTEC深海研究. 17. 73-87 (2000)