2000 Fiscal Year Annual Research Report
解離断片イオンの運動量測定による内殻励起3体解離過程の研究-核運動の直接観測-
Project/Area Number |
12440169
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Research Institution | Himeji Institute of Technology |
Principal Investigator |
小谷野 猪之助 姫路工業大学, 理学部, 教授 (80016089)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福澄 孝博 姫路工業大学, 理学部, 助手 (20244684)
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Keywords | 内殻励起 / オージェー過程 / 分子多価イオン / イオン化解離 / 3体解離過程 / 放射光 / 軟X線 |
Research Abstract |
実施計画の線に沿って、今年度は位置感知型2次元検出器2枚を用いた反跳イオン運動量スペクトルの直接測定装置の立ち上げに全力を注ぎ、これを完成させるとともにそれを用いた目的の実験にもこぎ着けることができた。本装置を第3世代放射光源と組み合わせ、次の成果を得た。 直線3原子分子CO_2のO1s,C1s電子および同N_2OのO1s電子のπ^*,σ^*軌道への共鳴励起によって生ずる3価イオンの3体解離過程を直接観測することに成功した。それは、同過程で生ずる3つのフラグメントイオンの飛行時間と検出器上の到達位置をコインシデンス測定し、それら3つのイオンの運動量ベクトル間の相関を求める方法で行った。各イオンの運動量ベクトル分布を表したニュートンダイアグラムから、σ^*励起におけるよりもπ^*励起におけるほうが解離直前の結合角(したがってオージェー過程が起こる直前の結合角)がずっと小さい方まで分布していることがわかった。これは本実験によってはじめて明らかにされたことである。その理由は次の如くである。π^*励起状態は電子と変角振動のカップリング(Renner-Teller効果)によって縮重が解け、直線構造が安定な状態と屈曲構造が安定な状態の二つに分かれる。この後者に励起されたものが、内殻正孔状態の寿命(数フェムト秒)内に安定構造へ向かって高速で変形し始め、その途中または平衡位置に達した後にオージェー過程とそれに続く解離を起こすためである。そして、本研究のハイライトとして、この二つのRenner-Teller状態を分けて観測することにはじめて成功した。本手法では、遷移モーメントの方向が分子面(解離面)内にあるものと面外にあるものを分けて拾い出すことが可能であるという事実によって成功した。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Atsunari Hiraya,: "H_2^+ formation from H_2O^+ mediated by the core-excitation-induced nuclear motion in-H_2O."Physical Review A. 63. 042705-1,042705-5 (2001)
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[Publications] Yoko Muramatsu: "Nuclear motion in the O 1s^<-1>2π_u core-excited states of CO_2 probed by sub-antural-width resonant Auger emission spectroscopy."Chemical Physics Letters. 330. 91-96 (2000)
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[Publications] Hiroaki Yoshida: "Angle resolved study of the Auger electron cascades following the 1s to 3p photoexcitation of Ne."Journal of Physics B : Atomic, Molecular, and Optical Physics. 33. 4343-4352 (2000)
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[Publications] Kazumasa Okada: "High resolution angle-resolved ion-yield measurements of H_2O and D_2O in the range of O 1s to Rydberg transitions."Chemical Physics Letters. 326. 314-320 (2000)
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[Publications] Norio Saito: "Molecular deformation in the O 1s ^<-1>2π_u excited states of CO_2 probed by the triple differential measurement of fragmentions."Physical Review A. 62. 042503-1,042503-5 (2000)
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[Publications] Inosuke Koyano: "Soft X-ray photochemistry beamline at Spring-8."Journal of Synchrotron Radiation. 5. 545-547 (2000)