2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12440170
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
平田 文男 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 教授 (90218785)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
KOVALENKO Andriy 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助手 (10332181)
佐藤 啓文 京都大学, 大学院・工学研究科, 講師 (70290905)
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Keywords | 溶液内化学反応 / RISM理論 / RISM-SCF理論 / 一般化ランジェヴァン / 水の粘性 / 圧力効果 / 電子状態理論 / 溶媒和電子 |
Research Abstract |
本研究はこれまで申請者らが開発してきたこれらの理論的要素をさらに発展させ、それらを統合することにより溶液内化学反応の分子論を構築しようとするものである。平成14年度は下記の二つの課題に取り組みそれぞれ1報の論文にまとめた。 (1)水の粘性に対する圧力効果 粘性をはじめとする水の輸送係数は常温においてその圧力依存性がある圧力で逆転する。例えば、粘性の場合定圧から50MPa付近までは減少し、その後、増加に転じる。この後者のふるまいは単純液体にも見られる一般的なふるまいであり、これまでにも多くの理論が提案されている。しかしながら、前者の挙動についてはこれまで分子レベルからの有効な理論は無く、「圧力を加えると水の水素結合ネットワークが壊れ、水分子が動きやすくなる」式の情緒的な説明が行われているに過ぎない。我々は相互作用点モデルに基づく一般化ランジェヴァン方程式とモード結合理論を組み合わせた理論によりこの間題の解明に取り組み、常温、常圧領域において水の圧力依存性に逆転現象が現れることをを初めて理論的に示すとともに、その物理的理由を説明した。(J. Chem. Phys.に投稿中) (2)溶質一溶媒間の電子交換をあらわに考慮した溶液内電子状態理論の提案 溶液中分子に関する既存の電子状態理論のほとんどは、分子間相互作用を、古典的な静電相互作用と古典的な近距離力の和で近似している。このため、交換反発等の量子論的な近距離力を考慮しておらず、また、古典的な近距離力(例えばLJ相互作用)を用いるという意味で経験的な理論的枠組みとなっている。そこで本研究では、分子間相互作用を量子論的に取り扱うことにより量子論的な近距離力を考慮し、気相中の電子状態理論と同等の意味での非経験的な溶液中分子の電子状態理論の構築に取り組んだ。さらに、ここで構築した理論を単純液体の電子状態並びに単純液体中の溶媒和電子について適用し、実験結果に略一致する結果を得ている。(J. Chem. Phys.に投稿中)
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Research Products
(5 results)
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[Publications] K.Nishiyama, F.Hirata, T.Okada: "Nonlinear Response of Solvent Molecules Induced by Instantaneous Change of Solute Electronic Structure : Studied by RISM Theory"J. Mol. Struct. 31. 565-567 (2001)
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[Publications] Tsuyoshi Yamaguchi, Fumio Hirata: "Translational diffusion and reorientational relaxation of water analyzed by site-site generalized Langevin theory"J. Chem. Phys.. 116. 2502-2507 (2002)
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[Publications] H.Sato, F.Hirata: "Equilibrium and Nonequilibrium Solvation Structure of Hexaamineruthenium (II, III) in Aqueous Solution : Ab Initio RISM-SCF Study"J. Phys. Chem. 106. 2300-2304 (2002)
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[Publications] T.Imai, H.Nomura, M.Kinoshita, F.Hirata: "Partial Molar Volumes and Compressibilities of Alkali-Halide Ions in Aqueous Solution : Hydration Shell Analysis with an Integral Equation Theory of Molecular Liquids"J. Phys. Chem.. 106. 7308-7314 (2002)
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[Publications] T.Yamaguchi, F.Hirata: "Interaction-site model description of the reorientational relaxation of molecular liquids : Incorporation of the interaxial coupling into the site-site generalized Langevin/mode-coupling theory"J. Chem. Phys. 117. 2216-2224 (2002)