Research Abstract |
1.3,5-ジ-t-ブチル-3,5-ジフェニル-1,2,4-トリチオランの酸化反応 trans-3,5-ジ-t-ブチル-3,5-ジフェニル-1,2,4-トリチオラン1,2-ジオキシドには硫黄上の立体化学の違いにより3つの立体異性体が考えられる。実際に単離される2つの1,2-ジオキシドについて性質を調べたところ,室温下,溶液中において互いに異性化することを見出した。この異性化反応の速度定数を求めることにより反応機構を考察した。また,trans-3,5-ジ-t-ブチル-3,5-ジフェニル-1,2,4-トリチオラン1-オキシドにMeerwein試薬を作用させると炭素上で反転が起こり,cis-3,5-ジ-t-ブチル-3,5-ジフェニル-1,2,4-トリチオラン1-オキシドが生成することを見いだした。 2.5-(1-アダマンチル)-5-t-ブチルテトラチオラン2-オキシドおよび2,3-ジオキシドと白金(0)錯体の反応 テトラチオラン2-オキシドおよび2,3-ジオキシドと(Ph_3P)_2Pt(C_2H_4)を反応させると,収率よく(Ph_3P)_2Pt(S_2O)(S_2O錯体)が得られた。さらに,単離したこのS_2O錯体を(Ph_3P)_2Pt(C_2H_4)と反応させると,新規な白金2核錯体である[(Ph_3P)_2Pt]_2(S)(SO)が得られた。この白金2核錯体の熱分解,光分解,酸化をおこなったところ,どの反応からも(Ph_3P)_2Pt(S_2O_2)(S_2O_2錯体)が得られた(熱分解ではS_2O錯体が主生成物であった)。熱分解をt-Bu(Ph)C=Sの存在下で行うと,S_2O_2錯体,S_2O錯体に加えてチオケトン錯体が生成し,加熱により[(Ph_3P)_2Pt]_2(S)(SO)から(Ph_3P)_2Pt^0が発生していることがわかった。以上のことから,[(Ph_3P)_2Pt]_2(S)(SO)は加熱あるいは光照射により(Ph_3P)_2Pt(SO)と(Ph_3P)_2Pt(S)に分解し,(Ph_3P)_2Pt(SO)は二量化して[(Ph_3P)_2Pt]_2(SO)_2を与え,これから(Ph_3P)_2Pt^0が脱離してS_2O_2錯体が生成したと考えられる。酸化反応では[(Ph_3P)_2Pt]_2(S)(SO)から直接[(Ph_3P)_2Pt]_2(SO)_2が生成し(Ph_3P)_2Pt^0の脱離によりS_2O_2錯体を与えたと考えられる。 3.S_6Oの調製とその反応 ビス(シクロペンタジエニル)チタンペンタスルフィドと塩化チオニルとの反応により系中でS_6Oを調製し,2,3-ジフェニル-1,3-ブタジエンと反応させたところ対応するジヒドロ-1,2-ジチインオキシド(S_2O付加体)が高収率(70%程度)で得られた。この他にはS_4捕捉体とS_2捕捉体が少量得られた。また,S_8Oと2,3-ジフェニル-1,3-ブタジエンを無溶媒で加熱したところ,同じS_2O付加体が30%程度の収率で得られた。
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