2000 Fiscal Year Annual Research Report
分子空孔を立体保護場として活用した新規キノイド化合物の創製
Project/Area Number |
12440204
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
後藤 敬 東京大学, 大学院・理学系研究科, 講師 (70262144)
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Keywords | キノイド化合物 / カリックスアレーン / ベンゾキノン / キノンイミン / 立体保護 / 電子移動 |
Research Abstract |
キノイド化合物は、有機反応および生体反応において重要な役割を果たしており、多くの研究が行われてきた。しかし、キノンイミンやチオキノンなど反応性が高いキノイド化合物については、共鳴効果などにより熱力学的に安定化された例は多くあるものの、そのような電子的摂動を加えることなく速度論的に安定化することは困難であった。本研究では、独自に開発したbowl型分子空孔の立体保護効果を活用して、高反応性キノイド化合物を安定に合成・単離するとともに、その構造・性質を解明することを目的として検討を行った。bowl型骨格としては、キノイド化合物の酸化や加水分解を防ぐために、立体保護効果が非常に高い架橋カリックス[6]アレーン骨格を用いることとした。まず、カリックスアレーンの空孔内というミクロ環境が、酸化還元活性なユニットに対して及ぼす効果を調べるために、cone配座に固定されたカリックス[6]アレーンをp-ベンゾキノンユニットで架橋した分子を合成した。各種アミン類との反応について検討したところ、キノン部位への電子移動に比べて付加反応が起こりにくくなっていることが示された。次に、高反応性キノイド化合物として、N-無置換キノンイミンの安定化について検討した。前駆体としてp-アジドフェノールユニット架橋体を合成し、塩基存在下で熱分解を行ったところ、対応するキノンイミン架橋体を良好な収率で得ることができた。このキノンイミンは結晶状態および溶液中いずれにおいても高い熱安定性を示し、また空気や水に対しても安定であった。これは、cone型に固定された架橋カリックス[6]アレーン骨格が、イミン部位を効果的に保護しているためと考えられる。このキノンイミンに対して各種アミン類を反応させたところ、還元体であるp-アミノフェノールを主生成物として与え、キノンの場合と同様に電子移動が起こりやすいことが示唆された。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Shigehisa Akine: "Crystal Structures and Solvate Formation of Two Conformationally Frozen Isomers of a Bridged Calix [6] arene"Journal of Inclusion Phenomena and Macrocyclic Chemistry. 36・1. 119-124 (2000)
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[Publications] Toshiyuki Saiki: "Structural Elucidation of 1, 3-Phenylenebis (methylene) -Bridged Calix [6] arenes with Four Uncapped Hydroxy Groups"Bulletin of the Chemical Society of Japan. 73・8. 1893-1902 (2000)
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[Publications] Toshiyuki Saiki: "Syntheses and Structures of Novel m-Xylylene-Bridged Calix [6] arenes : Stabilization of a Sulfenic Acid in the Cavity of Calix [6] arene"Journal of Organometallic Chemistry. 611. 146-157 (2000)
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[Publications] Kei Goto: "Synthesis and Crystal Structure of a Stable S-Nitrosothiol Bearing a Novel Steric Protection Group and of the Corresponding S-Nitrothiol"Tetrahedron Letters. 41・44. 8479-8483 (2000)
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[Publications] Kei Goto: "Synthesis and Reactions of Conformational Isomers of a Stable Selenenic Acid Bearing a Bridged Calix [6] arene Framework"Heteroatom Chemistry. (印刷中).
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[Publications] Junji Kobayashi: "5-Carbaphosphatranes : The First Main Group Atrane Bearing a 1-5 Covalent Bond"Journal of the American Chemical Society. (印刷中).