2002 Fiscal Year Annual Research Report
植物と昆虫の分子系統から見た植食性昆虫の寄主選択様式の進化
Project/Area Number |
12440217
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 真 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (80204494)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺地 徹 京都産業大学, 工学部, 助教授 (90202192)
曽田 貞滋 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (00192625)
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Keywords | 植食性昆虫 / 潜葉虫 / 分子系統 / 多様性 / 被子植物 / 送粉者 / ハモグリバエ科 / ヒカゲノカズラ網 |
Research Abstract |
植物の多様化とそれに対応した植食性昆虫の多様化の過程を調べる目的で、さまざまな陸上植物とそれを利用する植食性昆虫の採集と飼育、およびそのサンプルを使った分子系統解析を行なった。フィールド調査は琉球列島を含む日本国内各地とニューカレドニア、オーストラリア、ニュージーランドに及んだ。 今年度、重点的に行なった調査は、トウダイグサ科植物の分子系統とそれを利用するさまざまな昆虫類の分子系統の解析である。琉球列島の各島をめぐり、さまざまなトウダイグサ科植物とその植食性昆虫、特に子房食性、潜葉性、および虫えい形成性のホソガ類を採集した。それらを研究室に持ち帰り、DNAを抽出し、植物では葉緑体DNAおよび核DNAの、昆虫ではミトコンドリアDNAの塩基配列を決定し、系統関係を推定した。その結果、子房食性のホソガにおいて寄主植物との共種分化の関係が見い出された。 これまでに集められた多くの試料めうち、さまざまな寄主植物を利用するハモグリバエ科の潜葉虫の分子系統樹を作成した。その結果、ハモグリバエ科は単系統であるがいくつかの亜科は単系統ではないこと、最も祖先的な種群はすでに被子植物食で、ハモグリバエ科は被子植物食者として適応放散したのちにシダ食やコケ食が生じたこと、潜葉性のものから虫えい形成性が1回起源したことなどが明らかになった。 双翅目で植食性が進化したのは、ハモグリバエ科、ハナバエ科、ミバエ科、ショウジョウバエ科などわずかな科に限られている。Pallopteridae(仮称ハレギバエ)は稀な科として知られており、日本からは1種だけ報告されていたが、今回京都芦生でPallopteridaeの1種(日本初記録)がトウゲシバの潜葉虫であることを発見した。これはヒカゲノカズラ綱の潜葉虫として世界初の発見であり、潜葉虫の植食性の起源を考える上で重要な知見となった。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Kawakita, A., S.Sota, J.S.Ascher, M.Ito, H.Tanaka, M.Kato: "Evolution and phylogenetic utility of alignment gap within intron sequences of three nuclear genes in bumble bees (Bombus)"Molecular Biology and Evolution. 20. 87-92 (2003)
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[Publications] Kato, M.: "First record of herbivory on Lycopodiaceae (Lycopodiales) by a dipteran (Pallopteridae) leaf/stem-miner"The Canadian Entomologist. 134. 699-702 (2002)
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[Publications] Hata, H, M.Kato: "Weeding by the herbivorous damselfish Stegastes nigricans in nearly monocultural algae farms"Marine Ecology Progress Series. 237. 227-231 (2002)
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[Publications] Kawakita A, M.Kato: "Floral biology and unique pollination system of root holoparasites, Balanophora kuroiwai and B. tobiracola (Balanophoraceae)"American Journal of Botany. 89. 1164-1170 (2002)
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[Publications] Yamazaki, K, M.Kato: "Flowering phonology and anthophilous insect community in a grassland ecosystem at Mt. Yufu, Western Japan"Contributions from biological Laboratory Kyoto University. 29(印刷中). (2003)