2001 Fiscal Year Annual Research Report
水圏生態系における硫黄代謝関連微生物への分子生態学的アプローチ
Project/Area Number |
12440219
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
福井 学 東京都立大学, 理学研究科, 助教授 (60305414)
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Keywords | 16S rDNA / DGGE / 硫黄酸化細菌 / 淡水底泥 / Thioploca / 琵琶湖 / Desulfonema / 硫酸還元 |
Research Abstract |
糸状性硫黄酸化細菌Thioplocaについては主として海産種について研究がなされてきたが、この属の淡水種についての研究例は少なく、その系統や生理学的特性などに関する基礎的な知見もほとんど得られていない。本研究では二つの淡水湖、琵琶湖(日本)およびコンスタンツ湖(ドイツ)に棲息するThioplocaについて、系統学的、生理学的、および生態学的な側面からの特徴づけを行った。 16S rDNA配列に基づく系統解析の結果、両湖のThioplocaはThioploca ingricaと系統的に近縁であり、海産種とは別のクラスターを形成することが明らかとなった。この結果は形態の類似性と一致した。琵琶湖のThioplocaを用いて、生理的特性を推定するための実験を行った。その結果、硝酸還元と共役した硫黄酸化を行うことが示唆され、酢酸塩の取り込みが確認された。一方、無機炭酸の取り込みは確認することができなかった。また、環境中の硫酸イオンがシースに付着した硫酸還元菌により硫化水素に還元された後、Thioplocaによって酸化され元素状硫黄として取り込まれている可能性が示唆された。 Thioplocaの生態を推定するため、Thioploca周辺のバクテリア叢を分子生物学的手法により解析した。琵琶湖の底泥堆積物、および洗浄したThioplocaのシースをDGGE(変性剤濃度勾配ゲル電気泳動により解析した結果、シース上には周辺底泥とは異なる特異的なバクテリア叢が存在することが明らかとなった。コンスタンツ湖のThioplocaシースのDGGE解析では、硫酸還元菌の存在が示された。 以上の知見は、硫酸塩の低い淡水環境での硫黄サイクルを解明する上で重要な洞察を与えるものであり、今後の研究が期待される。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Ishii, K, Fukui, M: "Optimization of annealing temperature to reduce bias caused by aprimer mismatch"Appl.Environm.Microbiol.. 67. 3753-3755 (2001)
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[Publications] Katano, T, Fukui, M, Watanabe, Y: "Identification of cultured and uncultured picocyanobacteria from a mesotrophic lake"Limnol.. 2. 213-218 (2001)
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[Publications] 中川, 福井: "変性剤濃度匂配ゲル電気泳動法による微生物群集プロファイリング"陸水学雑誌. (印刷中). (2002)
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[Publications] Nakagawa, T, Fukui, M 他2名: "Successive changes in community structure of an ethylbenzene-degrading consortia"Wat.Res.. (印刷中). (2002)