2002 Fiscal Year Annual Research Report
その場透過電子顕微鏡観察による強誘電体薄膜の劣化ダイナミクスに関する研究
Project/Area Number |
12450010
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
酒井 朗 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (20314031)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
財満 鎭明 名古屋大学, 先端技術共同研究センター, 教授 (70158947)
安田 幸夫 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 教授 (60126951)
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Keywords | 透過電子顕微鏡 / その場観察 / 強誘電体 / PZT薄膜 / 電圧ストレス / 劣化 / 試料ホルダー / FIB |
Research Abstract |
本研究の目的は、透過電子顕微鏡(TEM)内で電圧ストレスを与え、実際に駆動状態にある強誘電体薄膜の局所的構造変化をその場観察する技術を確立し、強誘電体の分極特性劣化のダイナミクスを原子スケールで明らかにすることにある。本年度は、Pt上部電極/ペロブスカイトPZT薄膜/Pt下部電極/SiO_2/Si(001)基板構造に着目し、前年度までに開発した高分解能その場観察用電極付試料ホルダーを用いたTEM観察を試みた。本試料ではSi基板が用いられているのでTEM試料として下部電極が結線しにくく、非常に難易度の高い実験となることが予測されたが、今回、フォトリソグラフィー及び選択エッチング法を用いることで、上部Pt電極及びPZT薄膜を局所的に残した状態で下部Pt電極を露出させることに成功した。試料中の上部電極と下部電極を上記TEM試料ホルダーに結線することによって、150μm×400μm×2mmサイズのTEM試料において、強誘電体特性であるヒステリシスを確認した。さらに、本試料に対して集束イオンビーム(FIB)を用いた局所薄片化を行い、上部Pt電極/PZT薄膜/下部Pt電極の一部を、Gaイオンによって、断面観察が可能な0.1μm×1μm×20μmサイズの領域に加工した。試料ホルダーをTEMに設置し観察を行ったところ、設計どおりの積層構造が確認された。一方、試料ホルダーの電極端子をTEM外部の分極反転回路に繋ぎ、電圧に対する自発分極を測定したところ、FIB加工前に比べてヒステリシスが減少していることが確認された。詳細なTEM観察によれば、電子線回折図形上にはハローパターンが観察され、それは、PZT薄膜のFIB加工表面に存在するアモルファス相に起因していることがわかった。回折図形の解析から、これらはPbO_xであり、試料表面に形成されたダメージ相がヒステリシス特性の劣化に起因していることが明らかとなった。
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