2002 Fiscal Year Annual Research Report
STM近接真空ギャップ中の電子定在波励起を利用した表面電界の研究
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12450022
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Research Institution | Japan Advanced Institute, of Science and Technology |
Principal Investigator |
富取 正彦 北陸先端科学技術大学院大学, 材料科学研究科, 助教授 (10188790)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新井 豊子 北陸先端科学技術大学院大学, 材料科学研究科, 助手 (20250235)
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Keywords | 走査型トンネル顕微鏡 / 電子定在波 / 真空ギャップ / 電界放射 / 表面電界 / 鏡映力表面状態 |
Research Abstract |
本研究では、超高真空走査型トンネル顕微鏡(STM) (10^<-11>Torr)を活用して清浄表面を原子分解能で観察しながら、STM探針から電子を電界放射させて試料表面に照射する手法を基に、STM法を利用した新しい表面解析法を発展させた. STM探針に試料の仕事関数よりも高い負電圧を印加した場合、特定の条件下で試料表面近傍の真空ギャップ中に三角型閉込ポテンシャルが形成され、その中で電子定在波が励起される.これは、波動の属性をもつ電子が急峻なポテンシャル変化で散乱され、位相が変化して三角ポテンシャル中で共鳴状態を形成したためとも解釈できる.STMを利用して微分コンダクタンス-印加電圧特性を測定すると、一連のピークが観察される.このピークは、試料近傍に拘束された電子定在波や閉込ポテンシャルの特性を反映している.簡単な量子力学的考察に基づくと、スペクトルのピーク間隔から表面電界を推量することができる.探針を熱電界印加 (T-F) 処理すると、スペクトルの再現性が向上する.この探針処理技術をベースとして、電界放射電流を0.05nAまで減少させても微分コンダクタンス・スペクトルのS/N比が劣化しない回路系を構築し、原子状水素が吸着したSi(001)2x1表面でスペクトルを得た.6V以上の印加電圧で吸着水素は脱離するが、5V近傍の第一ピークの出現電位の変化から、水素吸着時におこる表面での電荷移動を考察した. さらに高い負電圧を探針に印加すると、試料表面で散乱される電子は、弾性的であったり、非弾性的であったりする.非弾性の場合、表面・バルクのプラズモン損失、オージェ過程が支配的である.これら散乱された電子のエネルギーを解析し、放射角依存を測定した.また、探針-試料間の電界による電子軌道のずれを抑制するために、シールドを工夫し、サブミクロン・スケールでの表面解析が可能なことを明らかにした.
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Research Products
(2 results)
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[Publications] M.Tomitori: "Surface spectroscopy utilizing field electron emission from thermal-field treated tips in STM"Journal of Surface Analysis. 9(3). 359-364 (2002)
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[Publications] M.Hirade: "Detection improvement for electron energy spectra for surface analysis using a field-emission scanning tunneling microscope"Japanese Journal of Applied Physics. (in print ).