2000 Fiscal Year Annual Research Report
レーザー誘起表面波による食品熱物性計測に関する研究
Project/Area Number |
12450091
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
長坂 雄次 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (40129573)
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Keywords | 熱物性 / レーザー計測技術 / 食品 / 粘性率 / 表面張力 |
Research Abstract |
食品工業において熱物性値の重要性が高まる中、特に食品の粘性率は工程の設計・制御・品質の評価に必要とされる。しかし食品の粘性は製造プロセス内で大きく変化する場合が多く、従来の計測技術ではその要求を満足できないのが現状である。 そこで本研究の目的は、食品の粘性率を非接触で高速に、かつ幅広い粘性率の変化に適用可能なレーザーを用いた光学的計測技術を、新たに測定原理から開発することである。 研究成果は以下のようにまとめられる。 (1)レーザー加熱により強制的に液体表面に微細な表面波を発生させるレーザー誘起表面波法の原理に基づいた実験装置を開発した。短時間(50ns)で加熱可能なパルスCO_2レーザーを加熱源に導入することで、低粘性、高粘性試料ともに安定して信号を検知できる実験方法を確立した。 (2)本測定法の原理では粘性率の差によって得られる信号波形は大きく異なる。低粘性試料として水、トルエンを高粘性試料としてグリセリン等を用いることで、その原理から予測される信号と同様の傾向を示す信号を上記の実験装置で検知した。低粘性試料と高粘性試料の間には、およそ1000倍以上の粘性率の違いがあり、この事により幅広い粘性率の測定の可能性を見出した。 (3)食品の主成分である水が吸収する赤外波長で発振するCO_2レーザーを加熱光源に用いることで、実際の食品であるハチミツの信号を検知した。 (4)実験的に得られた信号波形と、分散関係式を数値的に解いた理論波形に一致する部分が確認され、その逆問題解析によって粘性率および表面張力の算出の可能性を示した。また一致していない部分についても、試料の表面張力の温度依存性が影響していることを実験的に確認した。
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