強磁性超薄膜の垂直磁化Hall効果の増大と集積型不揮発メモリーへの応用

2001 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 12450143
• Research Institution: Tokyo Institute of Technology
• Principal Investigator: 中川 茂樹 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (60180246)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 松下 伸広 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助手 (90229469)
• Keywords: 強磁性Hall効果 / 垂直磁気異方性 / 磁化反転過程評価法 / スピントンネル現象 / 磁気的相互作用

Research Abstract

本デバイスの基礎となる強磁性Hall効果は垂直磁気異方性を有する極薄の垂直磁化層において観測される。前年度の垂直磁気記録媒体用のCo-Cr合金系薄膜に加え、今年度はより垂直磁気異方性が高く角形比も1に近いCo/Pt多層膜やCo/Pd多層膜の異常Hall効果について詳細な検討を行った。Hall効果の出力電圧は膜厚に反比例するため、膜厚が薄ければ薄いほど大きな出力を得ることができた。このHall電圧は膜中の磁化垂直成分に比例するため、通常の磁化印加方向の磁化成分を測定する振動試料方磁力計の出力とをベクトル的に考慮することにより斜め印加磁界中でのごく薄い記録層の領域の磁化反転過程を明らかにすることができる磁化反転過程の評価法を操案することができた。今年度はこれに加えて、磁化反転過程における膜中の微粒子磁化の磁気的相互作用を観測する指標として、ベクトル的に評価されたΔMプロット手法を確立することに成功した。これは従来の相互作用指標であったΔM測定をベクトル的に評価し、相互作用の方向性を示すことができ、相互作用の異なる垂直磁化膜であるCo-Cr合金系薄膜とCo/Pt・Co/Pd多層膜の相互作用の違いを評価することに成功した。これは本研究の強磁性Hall効果をもたらす磁化状態を観測するための極めて有効な磁化評価ツールとすることができ、大きな成果である。
またデバイスの安定性と磁化反転を助けるために設置することになる軟磁性層との複合構造膜において、もうひとつの強磁性Hall効果である面内Hall効果を分離観測することに成功し、これによって磁性複合構造膜の各層における磁化過程を独立評価することにも成功した。また素子作製のためにはフォトリソグラフィーとイオンミリングによる素子作製技術の向上をはかり、トンネル電流による注入キャリアの偏極度を高めたスピンフィルタを構成する必要のあることがわかった。

Research Products

• [Publications] Nobuhiro Matsushita, Jie Feng, Nobuhiko Funabashi, Shigeki Nakagawa, Masahiko Naoe: "BaM/Pt multilayered films with fine grains and large perpendicular magnetic anisotropy for high density recording media"Journal of Applied Physics. 89・11. 6837-6839 (2001)
• [Publications] Shigeki Nakagawa, Nobihiro Matsushita, Masahiko Naoe: "Perpendicular Magnetic Recording Media Using Hexagonal Ferrite Thin films Deposited on Pt Underlayers and Interlayers"J. Magn. Magn. Mater.. 235. 337-341 (2001)
• [Publications] Shigeki Nakagawa, Nobuhiko Funabashi, Jie Feng, Masahiko Naoe: "Fabrication and Recording Characteristics of Sputter-Deposited Ba-Ferrite Thin Films Deposited on Pt-Ta Underlayers for Perpendicular Magnetic Recording Media"IEICE TRANS. ELECTRON.. E84-C・9. 1137-1141 (2001)
• [Publications] 佐藤 厚, 中川茂樹, 直江正彦: "Co-Cr-Ta/Pt/Ti垂直記録膜の作製とPt中間層による微細粒子化"日本応用磁気学会誌. 25・4-2. 543-546 (2001)
• [Publications] 船橋伸彦, 馮 潔, 松下伸広, 中川茂樹, 直江正彦: "Pt下地層改良によるBaMフェライト薄膜の微粒子化"日本応用磁気学会誌. 25・4-2. 547-540 (2001)
• [Publications] 佐々木一郎, 佐藤 厚, 中川茂樹, 直江正彦: "異常Hall効果を用いた垂直記録媒体の磁化過程観測"日本応用磁気学会誌. 25・4-2. 599-602 (2001)
• [Publications] 斉藤弘幸, 清水 優, 中川茂樹, 直江正彦: "Si下地層上のCo/Cu多層膜の結晶性とGMR特性"日本応用磁気学会誌. 25・4-2. 803-806 (2001)
• [Publications] Sarbanoo Das, Shigaki Nakagawa: "Magnetic interaction among particles in Co-Cr-Ta media and Co/Pt multilayered media evaluated by anomalous Hall effect"Journal of Applied Physics. (掲載予定). (2002)
• [Publications] Shigeki Nakagawa, Ichiro Sasaki, Masahiko Naoe: "Magnetization processes of storage and back layers in double-layered perpendicular magnetic recording media observed using anomalous and planar Hall Effects"Journal of Applied Physics. (掲載予定). (2002)