強誘電体微結晶のテラヘルツ領域における誘電分極応答とサイズ効果

2001 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 12450267
• Research Institution: Tokyo Institute of Technology
• Principal Investigator: 和田 智志 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (60240545)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 井川 博行 神奈川工科大学, 工学部, 教授 (30016612) ; 垣花 眞人 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 助教授 (50233664) ; 鶴見 敬章 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (70188647)
• Keywords: 強誘電体単結晶粒子 / サイズ効果 / 蓚酸バリウムチタニル / 2段階熱分解法 / チタン酸バリウム / 新規誘電率測定法 / 誘電分解応答 / 有限要素法

Research Abstract

欠陥のない強誘電体微結晶を合成する手段として、蓚酸バリウムチタニルを原料とした2段階熱分解法を開発した。これは以下に示す2つの段階からなっている。第1段階では、蓚酸バリウムチタニルを酸素気流中、400℃前後で熱処理を行うことでTiの価数を4価に保ったまま、非晶質の中間生成物を合成する。続いて第2段階では、この中間生成物を真空中で排気しながら600℃前後の温度で熱処理することで立方晶のチタン酸バリウムを合成する。この方法をチタン酸バリウム微粒子の合成に適用した結果、初めて欠陥や不純物の取り込みがほとんどない17nmの平均粒径を持つチタン酸バリウム単結晶粒子の合成に成功した。これまでは、微粒化に伴い欠陥が多く導入され、高品質、高結晶性を保ったまま粒径のみを小さくすることは非常に困難であった。蓚酸塩の2段階分解法はこの問題を解決するのに成功した。更にこの方法は、チタン酸バリウム以外にも蓚酸塩を合成できるすべての誘電体に適用できた。そこで、誘電体としての性能を明らかにすべく、粒子の状態で誘電率を測定する手段について検討を行った。これまで粉の誘電率を測定する手法として2つの方法が存在する。1つは圧粉体で測定を行う方法であり、もう1つはポリマーと誘電体のコンポジットで測定を行う方法である。前者の方法は比誘電率が1に近い空気と誘電体とのコンポジットであるため、空気の影響を大きく受ける。実際、有限要素法を用いて、様々なタイプの接触モデルを用いて、空気-誘電体コンポジットの誘電率を計算した結果、例え誘電体の誘電率が数百から数十万の差があったとしてもコンポジットの誘電率ではほとんど差がなくなることを確認した。このことは圧粉体も用いた測定では信頼性の高いデータを得られないことを意味する。一方、ポリマーもその誘電率はどんなに高くても10未満であり、圧粉体よりは良いものの信頼性の高いデータを得られない。そこで、誘電体を誘電率が20以上の有機溶媒に完全分散したスラリーを作製し、種々の体積分率ごとに誘電率を測定した。この結果を粒子同士が接触せず、ランダムにかつある程度均一に分散したモデルを作製し、これを用いて誘電要素法に適用した結果、標準物質であるチタン酸ストロンチウムについてほぼ単結晶と同じ値を得ることができた。従って、本研究で開発したスラリーを用いた誘電率測定方法(スラリー法)は、粉体の誘電率測定において非常に有効であることが明らかとなった。続いて、2段階熱分解法で作製した17nmの平均粒径を持つチタン酸バリウム単結晶粒子の誘電率をスラリー法を用いて測定した結果、その誘電率は約400であることがわかった。参考のために堺化学工業で作製している粒径が500nmのチタン酸バリウム粒子を測定したところ、その誘電率は3,000であることがわかった。従って、17nmという値はサイズ効果により誘電率が低くなっている可能性があり、今後粒子径を増大させたときに誘電率がどのように変化するかを検討することが必要となった。更に、テラヘルツでの誘電率についても検討を行っている最中である。

Research Products

• [Publications] Satoshi WADA: "Hydrothermal Synthesis of Barium Titanate Crystallites using New Stable Titanium Chelated Complex Solution"Journal of Materials Science Letters. 19. 245-247 (2000)
• [Publications] Satoshi WADA: "Direct Synthesis of nm-sized Barium Crystallites using LTDS Method under CO_2-free Atmosphere"Journal of Materials Science Letters. 19. 283-285 (2000)
• [Publications] Satoshi WADA: "Direct Synthesis of nm-sized Barium Titanate Crystallites using a New Preparation Method"Transaction of the Materials Research Society of Japan. 25. 15-18 (2000)
• [Publications] Satoshi WADA: "Preparation of nm-sized BaTiO_3 crystallites by a LTDS method using a highly concentrated aqueous solution"Journal of Crystal Growth. 26. 433-439 (2001)
• [Publications] Satoshi WADA: "Preparation of nm-sized BaTiO_3 Fine Particles using a New 2-step Thermal Decomposition of Barium Titanyl Oxalates"the Proceedings of the 10th US-Japan Seminar on Dielectric and Piezoelectric Ceramics. 355-358 (2001)