2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12450278
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菅野 幹宏 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (60011128)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
倉本 繁 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (10292773)
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Keywords | アルミニウム合金 / 水素脆化 / 重水素 / 粒界破壊 / 低歪速度引張試験 / 質量分析計 / 応力腐食割れ |
Research Abstract |
高強度アルミニウム合金の水素脆化を抑制するためには、まず水素がどのように材料中に侵入するのか、また材料の破壊のプロセスにおいてどのような役割を果たすのかについて検討することが重要となる。本研究では、応力負荷時の環境から材料中に侵入して脆化をひきおこす水素の挙動を、粗大結晶粒組織を有するAl-Zn-Mg-Cu系合金を対象として調べた。大気中において10^<-3>〜10^<-4>/sの歪速度で引張試験した場合に延性的な粒内破壊を示す試料が10^<-7>/sの低歪速度では脆性的な粒界破壊を示す。これが水素によるものであるかどうかを明らかにすることを目的として、大気環境下での低歪速度引張試験による脆化挙動の評価と、質量分析計付き材料試験機による変形・破壊挙動と関係する水素の分析を実施した。まず10^<-7>/sの低歪速度引張試験の結果、Al-Zn-Mg-Cu系合金が顕著な粒界破壊を伴う脆化挙動を示すことを確認した。次に変形中に環境から侵入する水素の挙動を調べるために、室温・飽和重水蒸気圧雰囲気下で低歪速度での引張予備変形を付与して、その後高真空下で引張変形を与えた際の変形・破断時における重水素の放出挙動を質量分析計付き材料試験装置により調べた。その結果、予備変形時に材料内部に侵入したと考えられる重水素がその後の変形時に継続的に放出されることがわかった。また、試験片外観の観察から、局部変形開始直後に表面に粒界クラックが発生していることが確認されており、低歪速度引張変形時に局部変形を開始してから環境中の水素が粒界クラックの進展とともに材料内部に侵入していくことが示された。今後、結晶粒微細化元素を含む実用合金に近い組成を有する試料を用いた検討を行い、クラックの進展に伴う水素の挙動を材料中に存在する第二相(析出相、分散相、晶出相)と水素との相互作用まで含めて詳細に調べることを予定している。
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