2001 Fiscal Year Annual Research Report
海洋油汚染の生態系への影響に関する動態分析法の構築
Project/Area Number |
12450407
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
福地 信義 九州大学, 大学院・工学研究院, 教授 (80039677)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村山 雅己 船舶艤装品研究所, 主任研究員
胡 長洪 九州大学, 大学院・工学研究院, 助手 (20274532)
篠田 岳思 九州大学, 大学院・工学研究院, 助教授 (80235548)
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Keywords | 油汚染 / 生態系 / 動態分析 / 内湾 / 支配要因 / 油種 / 油量 / 油回収 |
Research Abstract |
油流出による海洋汚染には、船舶運航時のビルジの排出に伴う流出などの日常的汚染と衝突や座礁などの事故による突発的な流出がある。その内で船舶同士の衝突事故やオイルタンカーの座礁事故のような突発的な油流出は、その拡散防止や防除対策が遅れたり、対策の選択を間違うと,大量の油が広域にわたり拡散し、事故周辺海域の生態系や環境に重大な影響を与え、沿岸住民にも社会的、経済的に多大な影響を及ぼすことになる。特に油汚染による生態系への影響は長期に渡り、種の絶滅も含めて重大な問題となる。 本研究では、油流出事故に伴う海洋油汚染の生態系への影響を、時間と共に状態が変化する多数の要因が、複雑に関連する問題として捉え、動物プランクトン、植物プランクトン、デトライタス、ネクトン、溶存酸素を構成要因とし、要因間の因果関係を考慮したシステム・ダイナミクスに基づく動態分析のためのシュミレーションモデルを構築した。その適用例として、広島湾における生態系に適用し、事故後の流出油がどのように生態系へ影響を及ぼすかを流出油量、油種,事故発生時期などを考慮して調べた。 1)油量の違い:流出油が対象海域に一様厚さで拡散する仮定のもとでは、油量が多いほどデトライタスが急増することから、油量は生態系に極めて大きい影響を与える要因である。 2)油種の違い:分解速度の遅いC重油、原油、A重油の順にデトライタスの発生が多く、C重油のように分解されにくい油は長期にわたり環境に大きな影響を与えることがわかる。 3)流出時期の違い:生態系の構成因子が季節により変化するために、事故発生時期により生態系への影響は異なり、植物プランクトンが増加する秋から冬にかけて事故が発生した場合に生態系に与える影響が大きくなる。ただ、事故発生時期の影響度は他の要因に比べあまり大きくない。 4)回収作業の違い:流出油量が多いときは、油回収船の数が多いほうが回収能率は上がり、油量が少ないときは油膜厚も薄くて、回収船の数を増やしてもあまり回収能率は上がらないことが、デトライタスの発生量に現れている。
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Research Products
(1 results)